ファイナンス 2021年9月号 No.670
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中食、外食の栄養価・しかし、中食で購入する弁当や惣菜等や、外食の食事については、栄養価を懸念する声も存在する。・先行研究においては、市販弁当に含まれる食材、栄養素は、厚生労働省の示す目標値(一日の摂取量)の3分の1(≒1食分)と比較すると、野菜が10分の1程度、食塩は1倍~2倍程度であることや(図表7)、外食、調理済み食品を利用する消費者は脂質が多く、食物繊維が不足する傾向にあることが指摘されている(図表8)。・中食や外食の増加が進むことで、野菜摂取量の減少や、脂質摂取量の増加が進む可能性がある。国民健康栄養調査によれば、野菜摂取量、脂肪エネルギー比率ともに厚生労働省の示す目標値には各年代で到達しておらず、2019年はそれ以前と比較すると、目標値からより遠ざかっている(図表9、10)。図表7 コンビニの幕の内弁当に含まれる栄養素野菜食塩相当量脂肪エネルギー比率gg%E平均17.54.428標準偏差11.91.56.1目標値(一日の摂取量)35010未満25以下図表8 外食・中食利用者の摂取栄養素脂質食物繊維%Eg男男女外食・調理済み食群25.913.512.7家庭食群24.215.614.6(注1)外食・調理済み食群は1日のうち、1回以上外食または調理済み食による食事をとったグループ。家庭食群は3食とも内食だったグループ。(注2)出典論文の分析結果のうち、5%水準で有意に差があり、本稿の他の図表とも関連している項目のみを抜粋している。図表9 年齢別野菜摂取量↑目標:350g以上/日21036031026020歳-30歳-40歳-50歳-60歳-70歳-(g)201120152019野菜摂取量基準図表10 年齢別脂肪エネルギー比率↑目標:25%以下※厚生労働省の目標設定は、20代~40代についてのみである。15.035.025.020歳-30歳-40歳-50歳-60歳-70歳-(%)201420122019摂取基準(20~40歳代)満たされぬ健康的な中食、外食需要・このような、中食、外食の栄養バランスに対しては、消費者は満足していないように見受けられる。・野菜不足の原因として消費者が最も多く挙げているのが、「外食や中食の利用が多い」ことである(図表11)。上述のように、中食、外食では十分な野菜が取れないということを消費者も認識していることが分かる。・しかしながら、中食購入時に重視するポイントを尋ねたアンケートでは、「自由に選べる」という品揃えとほぼ同じ割合で「栄養バランス」を重視するという消費者が多い(図表12)。栄養バランスを重視しているものの、そのような選択肢が少ないという消費者の意識が反映され、飲食業者への希望として、「野菜たっぷりのメニュー」や「減塩のメニュー」等、栄養バランスに配慮した品揃えを希望する割合が大きくなっている(図表13)。・今後も中食、外食利用は拡大するとみられるが、簡便さだけではなく、栄養面についても消費者のニーズを取り入れたメニューの拡充が必要となるだろう。図表11 野菜摂取量が不足している原因調理に手間がかかるから野菜の値段が高いから外食や中食の利用が多く、野菜が少ないから他のものをたくさん食べてしまうから食べたい野菜メニューがないからたくさん食べられないから野菜が嫌いだから野菜を食べるのに時間がかかるから食事を抜くことが多いからその他わからない0204060(%)(注)消費者モニター500人を対象に行ったアンケート調査(回答者数:487名、回収率:97.4%)項目を3つまで選択し回答し回答する形式。図表12 中食購入時に重視するポイント1位2位3位合計自由に選べる21.4%9.0%9.1%39.5%安心・安全10.4%16.2%10.6%37.2%栄養バランス10.1%14.3%14.9%39.3%素材のこだわり9.5%6.2%8.2%23.9%おかずの好み8.7%6.4%9.3%24.4%(注)重視するポイント3つを順位を付けて回答する形式。図表13 飲食業者の食品提供への希望(食材の産地や旬、アレルギー情報等)栄養情報の表示減塩のメニューカロリーの表示野菜たっぷりのメニュー栄養成分の表示低カロリーのメニュー低脂肪のメニューその他希望はない0204060(%)(出典)一般社団法人日本惣菜協会「2021年版惣菜白書」、総務省「家計調査」、農林水産省「食料・農業及び水産業に関する意識・意向調査」(平成27(2015)年3月公表)、株式会社富士経済「外食産業市場を多角的に分析」、難波 友美・串田 修・村山 伸子「コンビニエンスストア弁当の野菜量とエネルギー、脂肪エネルギー比率および食塩相当量との関連の検討」、小林 真琴・小林 ゆかり・小林 良清「青年期から中年期をターゲットとした健康づくり施策(食環境整備)の検討ー平成19年度県民健康・栄養調査結果からー」、厚生労働省「国民健康栄養調査」、東京都「令和2年度第6回インターネット都政モニターアンケート『都民の食習慣と外食・中食の利用状況』」、FBS株式会社「2017年度中食1000人アンケート結果」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2021 Sep.71コラム 経済トレンド 87連載経済 トレンド

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