ファイナンス 2021年9月号 No.670
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コラム 経済トレンド87大臣官房総合政策課 調査員 白井 斗京/髙根 孝次中食、外食市場の動向と課題本稿では、近年拡大している中食、外食市場の動向と、課題について分析を行った。近年の食事のトレンド・核家族化の進行や共働き家庭の増加を背景に、外食や中食を日々の食事に利用する動きが見られ、それぞれの市場規模は成長している(図表1)。(中食とは、調理食品の購入や、弁当や惣菜等のテイクアウト、デリバリーを利用する等、家庭外で調理された食品を家庭や職場に持ち帰って食べる食事形態を指す。)・中食、外食の消費内訳を見ると、外食の割合が徐々に低下し、調理食品の中で「弁当」や「他の主食的調理食品」(パスタや炒飯等)が増加している(図表2)。中食を利用する理由としては、「時間がない」「調理・片付けが面倒」等、時間の節約のための理由が多い(図表3)。共働き家庭が増え、また一人暮らしの若者・高齢者が増えること等で時短ニーズが高まるなか、より簡便に食事を準備できる中食の消費が伸びていると考えられる。図表1 中食、外食の市場規模の推移8.110.323.726.0+27.2%+9.7%0.040.035.030.025.020.015.010.05.02010年2019年(兆円)(注)グラフ内の数値は食市場計に占める各項目の金額及び増加率中食(惣菜)外食図表2 中食、外食の消費内訳2000年2005年2010年2015年2020年主食的調理食品14.0%15.5%15.7%16.6%21.1%弁当4.2%4.6%5.0%5.0%6.0%すし4.4%4.7%4.5%4.5%5.3%他の主食的調理食品3.1%3.5%3.5%4.0%6.0%他の調理食品22.5%23.0%22.7%23.3%29.4%天ぷら・フライ3.1%3.3%3.4%3.6%4.4%冷凍調理食品1.7%2.0%2.1%2.4%3.4%そうざい材料セット1.9%1.6%1.3%1.0%1.3%外食63.5%61.5%61.6%60.1%49.5%(注)項目を抜粋しているため、小分類を全て足しても100%にはならない。図表3 中食を利用する理由(世帯別)(複数回答)(単位:%)二人以上の世帯単身世帯時間がない4744普段自分が作れないものが食べられる4143外食するより価格が安い3431調理・片付けが面倒3145好きなものを食べられる2932自分で食事を作るより価格が安い2234食材が無駄にならない2127好きな場所で食べられる1718栄養バランスに配慮できる811その他89(注)消費者モニター987人を対象に行ったアンケート調査(回収率91.9%)。新型コロナ感染拡大下での食の変化・新型コロナ感染拡大下の食の変化を確認すると、外出自粛により外食が落ち込む一方、食料支出全体での落ち込みは少なく、内食(自炊)や、中食へのシフトが生じたと考えられる(図表4)。・内食の例として「穀類」・「野菜」の消費を見ると、新型コロナ感染拡大初期の2020年3月~8月に増加したが、その後は外食が回復するにつれて、減少する動きをしている。一方、「調理食品」の消費は新型コロナ感染拡大下でも増加を続けている(図表4)。食料支出に占める構成比では、2020年4月に「野菜」類の増加と外食の減少、2021年4月にその逆の動きが見られ、「調理食品」の割合は一貫して増加し、中食消費の増加がみられる(図表5)。・また、図表4、5の「家計調査」では「外食」に含まれる、テイクアウト、デリバリー市場も堅調に成長している(図表6)。大手デリバリーサービスの拡大等により、新型コロナ感染拡大前からこれらの市場規模は成長していたが、感染拡大期に際しては、人との接触を避けられることがメリットとなり、2020年も成長が続いたとみられる。・以上を総合すると、新型コロナの感染状況が落ち着くにつれ、外食市場も増加しながら、図表1のように、中食市場がより大きく伸びるトレンドに戻ることが見込まれる。図表4 食品群別消費量401301201101009080706050357911135791113579111312018201920202021(二人以上世帯、季節調整値、2018年1月=100)(注1)「家計調査」においては、デリバリー、テイクアウト、店内飲食を問わず、飲食店から飲食物を購入する形式は全て「外食」に計上されている。(注2)総務省「家計調査」より筆者作成。食料穀類野菜調理食品外食図表5 各年4月の食品群別消費金額、構成比2018201920202021消費額(円)構成比(%)消費額(円)構成比(%)消費額(円)構成比(%)消費額(円)構成比(%)食料75,48710077,46310073,91910075,640100野菜・海藻8,84811.78,62611.110,21513.88,86111.7主食的調理食品4,0475.44,4285.74,2505.74,6836.2他の調理食品5,4347.25,6787.35,7467.86,2208.2外食13,69818.114,56218.85,1276.99,55212.6(注)総務省「家計調査」より筆者作成。図表6 テイクアウト・デリバリー市場規模00.20.40.60.812015年2019年2020年(見込)(兆円)テイクアウト市場デリバリー市場70 ファイナンス 2021 Sep.連載経済 トレンド

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