ファイナンス 2021年9月号 No.670
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けてデータを取ることによって、より具体的なペアリング情報が得られます。蔵元が投資をしなくても、このシステムを利用するだけで棚卸情報も百パーセント分かり、どの国のディストリビューター、どの国のレストランがどのお酒を何本持っているのか日々分かり無駄がなくなります。こういう仕組みをここ何年かやってきて、やっと効果が発揮され、コロナ禍でも取引先はむしろ販売を伸ばしています。これはまだ試作段階なので、一つの蔵だけでやっていますが、今年中にはサービスとして提供できるようにしたいと思っています。そうすれば、蔵元がうちのシステムを使うことでより効果的にビジネスを行うことが出来ます。システム自体は簡単で、現在はQRコードを利用していますが、今後はRFID(ID情報を埋め込んだRFタグから、電波などを用いた近距離無線通信によって情報をやりとりする仕組み)など様々な仕組みを利用すれば更にいろいろなことができるようになるので、新しく導入するものを検討していきます。QRコードにしてもRFIDにしても温度管理まですべて記録できるものもありますので、そういうものを使えば、「COLD CHAIN SYSTEM」がさらに生きるのではないかと考えています。特にこれから市場が伸びていくであろう中国はQRコードが普及しているので、最も導入が簡単で拒否反応は少ないです。最終的には決済システムまでこの仕組みの中に組み込んでいけたらと考えています。7. 品質保証システム  COLD CHAIN SYSTEM中田 「SAKE BLOCKCHAIN」とともに必要になってくるのが、「COLD CHAIN SYSTEM」です。これは、国内・海外のどの場所であってもきちんとした温度管理を行うということで、国内輸送トラックから船や飛行機、海外ディストリビューターの倉庫、配送するトラック、そして飲食店の冷蔵庫にまで、徹底した温度管理を行ってもらいます。最も難しい点は国内の港倉庫、海外の検疫の倉庫での温度管理です。ここだけは僕たちではどうにもできません。ここでの温度管理がきちんとできるようになれば、僕らが目指しているマイナス5度で日本酒を海外飲食店まで移送することが百パーセントできるようになります。「SAKE BLOCKCHAIN」と「COLD CHAIN SYSTEM」を使えば各物流の拠点に何日間何度で保管されているのかがわかるので、日本酒の状態を僕たちはつねに把握できます。そうなると状態が良いのが当たり前で、状態が悪いと、だれが何をしたのかも分かります。これがブロックチェーンの良さです。マイナス5度で保管されていると、通常1か月くらいといわれている消費期間は1年を超えてもちますし、むしろきちんと熟成させると出荷してからもおいしくなります。結果、商品を最高の状態で消費者に届けることができます。8. 情報提供・データ収集システム Sakenomy中田 あとは何が足りないのかというと、消費者に対して、その商品が何であるのかという情報を提供する仕組みです。そこで僕は「Sakenomy」というアプリをつくりました。「Sakenomy」では、全国1000蔵以上が造る、何万という商品の情報が検索でき、日本語だけでなく多言語で情報提供することで世界中の人たちが自分の好みの商品情報や、どこで買えば良いのかが分かるようになります。「Sakenomy」からは消費者データが、「SAKE BLOCKCHAIN」からは流通データが得られるので、両方のデータを照らし合わせれば、具体的に世界中のどのような場所でどういう味・商品が求められているのかが具体的に把握できるようになります。まだ、すべての酒蔵ではないですが300以上の蔵元には、直接「Sakenomy」アプリに商品情報や、ペアリング情報などを入力してもらっています。多くの飲食店は、自分たちが提供する料理に合う日本酒がどれなのかがわからないので、蔵元からの情報でフードペアリング検索ができれば最も早い。こういった情報を多言語で提供することによって海外でも仕入れがしやすくなります。飲食店への販売が、多くの売上を生みますので、飲食店に分かりやすい情報、例えばお客様に提供するべき温度や、どういう器で飲むとおいしいですよ、ということをきちんと蔵元が飲食店に発信することが大切だと思います。「Sakenomy」によって消費者には酒蔵やお酒の情報を、蔵には消費者データを渡すシステムを作り、 ファイナンス 2021 Sep.67令和3年度職員トップセミナー 連載セミナー

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