ファイナンス 2021年9月号 No.670
60/98

トレーストゥギャザー(TT)トークン接触者追跡システム「トレーストゥギャザー(TT)」のアプリもしくはトークン(小型端末)は、監視カメラを使ったソリューションと比較して、監視に対する懸念が少なくて済みます。特に、個人情報におけるプライバシーや、その情報がどのように追跡、管理されているかについて多くの国で議論が活発に交わされるようになっています。日本でも追跡アプリ(COCOA)導入時には、似たような議論があったのは記憶に新しいところです。この問題に関して言えば、市民が政府を信頼するかどうかは、個人から集めたデータの利用方法について、政府が市民へどう説明するかにかかっていると思います。この関連では、シンガポールでは、政府がQRコードチェックインで集めたデータの用途を最初に公開し、丁寧に説明しました。同政府は、情報公開と透明性を重視したため、市民とのコミュニケーションに成功していると思われます。◆ 2021年5~6月はクラスター発生で「フェーズ2」に後戻りアフターコロナの雰囲気に満ちていたシンガポールですが、2021年5月に海外からのコロナ変異種の流入等により、再度のコロナ感染クラスターが発生しました。そのため段階規制が「フェーズ2」の中でも厳しい規制措置のある「phase 2 heightened alert period」となりました。◆ 「phase 2 heightened alert period」における規制措置とはどんなものなのか?2021年5月16日~6月13日の「phase 2 heightened alert period」の主な規制ポイントは次の通りでした。・外出や集まりの人数は2名まで(親子の場合等、特例もあり)・飲食店での外食禁止・学校(小・中学校、高等専門学校、ジュニアカレッジ)の閉鎖(5月28日まで。6月から地元の学校は長期休み)、インターナショナルスクールは引き続き休み、または厳しい規則に従い運営)・ショッピングモールの人数制限・美術館等の人数制限・一般家庭に訪問できる人数は、訪問業者も含めて1度に2名まで(1日最大2名)・オフィスでの勤務の非推奨、等◆ 2021年6月~現在:一旦、フェーズ3「Heightened Alert」へ移行するも、クラスター感染の拡大により、7月下旬よりフェーズ2「phase 2 heightened alert period」に逆戻りシンガポール政府は、市中感染の減少を受け、2021年6月14日から、社会・経済活動制限の段階的緩和(フェーズ3「Heightened Alert」)への移行を発表しました。グループ行動の人数制限を5人までに引き上げる他、同月21日からは飲食店での店内飲食を解禁するとしてしました。しかし、その後、複数のカラオケバー(KTVラウンジ)やナイトクラブが飲食店(F&B)などの施設から多数のクラスターが発生したことから、7月16日、シンガポール当局は、すべてのナイトライフ施設の営業停止、及び飲食56 ファイナンス 2021 Sep.連載海外 ウォッチャー

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る