ファイナンス 2021年9月号 No.670
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*22 *22) 本文に紹介した以外の、医療の質にかかる国際比較の各種データについては以下から参照可能。総体として、本文に書いた「フランスの医療の質はOECD加盟国等の平均近傍かそれよりも良好」という評価をはみ出るものではないと考えられる。Health at a Glance 2019 : OECD Indicators | OECD iLibrary (oecd-ilibrary.org)医療の質総合的に勘案した医療ニーズと医療サービスのミスマッチに関して、フランスはスイス・ドイツ・オランダなどには劣後するものの、EU27か国平均よりは良好である(図6)。各種がんの5年生存率(図7)、慢性疾患の悪化による入院率(図8)、回避可能な死亡例発生率(図9)などを見ても、OECD加盟国等の平均近傍かそれよりも良好なパフォーマンスが示されている*22。これら医療の質に関するデータなども背景に、コロナ危機発生以前におけるフランスの医療システムに対する自己評価としては、「医療関係支出の効率的な抑制と医療の質の確保を両立してきており世界に誇るべきものだ」というような声が、関係者へのインタビューなどを通じて多く聞かれた。しかしながら、コロナ危機に際して蘇生病床、マスク、PCR検査、ワクチンなどの供給局面で思わぬ脆弱性を露呈したことで、こうした評価に対する懐疑が生じ、医療提供体制改革について従来の取組みの不十分さ、今後の改革の必要性が多く唱えられるようになったように感じられる。客観的にみれば、既に2018年の時点で「私の保健2022」という複数年にわたる医療提供体制改革を開始しており、むしろ先回りして脆弱性を取り除く取組みを開始していた、と見ることもできよう。ただ、危機発生時における政府に対する世間の評価は、いつの世においても、平時の備えの薄さ、危機対応の遅さ・不十分さなどに目が向く傾向があるのかもしれない。(図6) 経済的、地理的、時間的理由により医療診療が行われなかった医療ニーズの割合に関する国際比較(2018年)(出典)OECD Health at a Glance 20 【コラム】フランスの医療提供体制概観 その2 医療の質 アクセシビリティに関しては、例えば、「通常利用している医者にコンタクトをみたその日に、当該医者から返事をもらえないことがたまに・よく・いつもある」の割合は、フランスについて2016年に14%となっている。これはスイス(12%)、イツ(13%)、オランダ(13%)などより多く、カナダ(33%)、米国(28%)、英(21%)などよりも少ないiv。 時間だけでなく、その他の理由も総合的に勘案した医療ニーズと医療サービスのスマッチに関しても、フランスはスイス・ドイツ・オランダなどの国々よりは「悪いデータが示されているが、EU27か国平均よりは良好である。 経済的、地理的、時間的理由により医療診療が行われなかった医療ニーズの割合にする国際比較(2018年) (出典)OECD Health at a Glance:Europe 2020(図7)直腸がん5年生存率の国際比較(2010年–2014年)71.171.068.367.867.367.166.666.065.364.864.864.764.464.264.163.062.562.361.761.360.960.660.359.659.556.954.853.952.752.652.349.548.648.442.641.938.032.730.09.101020304050607080Age-standardised ve-year net survival (%)KoreaAustraliaNorwayIsraelSwitzerland¹Canada¹BelgiumNew ZealandNetherlandsJapan¹DenmarkSwedenFinlandAustriaUnited States¹IcelandUnited KingdomGermany¹IrelandItaly¹France¹OECD32SloveniaPortugalSpain¹China¹EstoniaCosta RicaLithuaniaTurkey¹Czech RepublicLatviaSlovak RepublicPolandBrazil¹²Russian Federation¹Colombia¹²Chile¹²India¹South Africa¹²³(出典)OECD, Health at a Glance 2019【コラム】フランスの医療提供体制概観 その236 ファイナンス 2021 Sep.SPOT

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