ファイナンス 2021年9月号 No.670
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(ア) 非医師の医療従事者の報酬改善(総額年76億ユーロ)● 公立病院・介護施設等の非医師の医療従事者の月額報酬を183ユーロ(ネット)増額(民間非営利施設に関しては160ユーロ増額)。150万人相当分。● 看護師・パラメディカルなど患者と接触のある職種に関しては、俸給表上の報酬を勤務年数に応じて改善することを通じて、月額報酬を平均的に35ユーロ(ネット)増額(上記に上乗せ)● 治療の質向上等の観点からチームによる集団的な態勢整備が図られた場合における月額100ユーロの特別手当● 週5時間分の超過勤務に対する5割増しの残業手当(週35時間労働を基準としているので、週40時間労働が上限)(イメージ1) フランス政府公表のパンフレットに掲載された個人の医療従事者ベースでの報酬改善のイメージ(イ) 公立病院の医師の待遇改善(総額年4.5億ユーロ)● 公立病院医師の俸給表に関して、キャリアの終期に3段階の級を上乗せ創設● 公的サービスへの排他的関与手当(IESPE)の月額1010ユーロへの引上げ(グロス)(従来は勤務年数に応じて月493ユーロまたは704ユーロ。10万人の医師が裨益。)(ウ) インターン生・学生の待遇改善(総額年2億ユーロ)● インターン生のベース報酬の5%~10%引上げ、宿直手当の25%引上げ● 医療関係職の学生のベース報酬の引上げ(4年生+130ユーロ、5年生+69ユーロ、6年生+109ユーロ)、過疎地域での見習訓練に対する150ユーロの宿泊手当このように最も世間の耳目を集めた看護師・パラメディカル等の報酬引上げは一応の決着をみた。しかし、セギュール医療全体会議がキックオフした際に示された柱のうち、第二~第四の柱も同等かそれ以上に重要である。往々にしてそうであるように、こうした論点は専門的で地味であるために多くの人々から看過されやすいが、関係者の相当の作業・努力を要するものと考えられる。また、これらの柱にかかる改革の進展なしには、真に体系的な医療提供体制改革とは言えず、単にコロナ危機に直面しての弥縫策的な給付増に堕してしまうおそれもある。来月号の「医療提供体制改革編・下」では、こうした問題意識を背景としながら、セギュール医療全体会議の結論の全体像を紹介するとともに、その後、今日に至るまでの関連分野における紆余曲折や進展をみることとしたい。 ファイナンス 2021 Sep.35コロナ危機下におけるフランスの制度改革の行方SPOT

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