ファイナンス 2021年9月号 No.670
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3セギュール医療全体会議の立上げこのSégur de la santéと呼ばれる会議(以後「セギュール医療全体会議」)は、2020年5月25日に医療関係者300人程度をビデオ会議方式で招いて第一回会合が開催された。議長には、大手の労働組合CFDTの書記長を務めた経験もあるニコル・ノタ(Nicole Notat)氏が起用され、政府側からはフィリップ(Édouard Philippe)首相(当時)やヴェラン連帯保健大臣が参加した。セギュール医療全体会議は以下の四本柱の事項について検討を依頼された。*11 *12<第一の柱>医療関係の職を改善するとともに医療従事者への評価を引き上げる<第二の柱>医療介護サービスに対する投資・財源調達に関する新たな政策を措定する<第三の柱>医療組織と医療チームの日常を劇的に簡素化する<第四の柱>地域における保健分野の関係者を利用者サービスの観点から一つにまとめる*11) 例えばhttps://www.leparisien.fr/societe/les-inrmieres-francaises-sont-elles-si-mal-payees-17-05-2020-8318796.phpなど。*12) 公務員の俸給の決定方法については、https://www.fonction-publique.gouv.fr/ma-remu/remuneration-tout-comprendre。医療関係者の俸給表のうち、例えばカテゴリーAグレード1の看護師に関するものは、https://www.fonction-publique.gouv.fr/ma-remu/quoi-de-neuf-par-metiers/inrmier-grade-1。よりかみくだくと、第一の柱が看護師・パラメディカル等の報酬引上げなどの待遇改善、第二の柱が医療分野における財政問題への対応、第三の柱が官僚主義的とされる公立病院などの組織改革・ガバナンス改革、第四の柱が病院・診療所連携などの地域医療機能強化、ということになろう。第一回会合終了後に記者会見に臨んだフィリップ首相は、中途半端な改革でお茶を濁すことはしないと宣言し、2018年から政府が進めてきた医療改革の方向一方で、コロナ危機発生以降の報酬を巡る議論においては、フランスの看護師は、平均賃金対比における報酬水準が国際比較上かなり下位(32か国中28番目)に位置していることが報道などでも取り上げられた*11(図5)。また、公的機関で勤務する看護師、パラメディカル等の報酬は公務員としての俸給表によって決定されている。医療施設の経営状況や労働市場の逼迫度に応じて柔軟に賃金調整がなされないことが彼女/彼らの報酬問題の背景となっていると考えられる*12。(図5)看護師(病院勤務)報酬の平均賃金対比(2017年)0.70.80.90.90.91.01.01.01.01.01.01.01.11.11.11.11.11.11.11.11.11.11.21.21.21.21.21.31.31.51.51.81.800.511.52LithuaniaLatviaSwitzerlandFinlandFranceIcelandSloveniaSlovak RepublicUnited KingdomNorwayHungaryEstoniaPortugalItalyDenmarkJapanIreland¹PolandCanada¹BelgiumOECD32GermanyCzech RepublicNetherlandsGreeceNew ZealandAustraliaUnited States¹SpainLuxembourgIsraelMexicoChile¹(出典)OECD,Health at a glance 2019(写真3)ニコル・ノタ議長(本人提供)32 ファイナンス 2021 Sep.SPOT

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