ファイナンス 2021年9月号 No.670
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1令和4年度概算要求基準の基本的な 考え方日本の財政は、少子高齢化に伴う財政の悪化という構造的な課題に直面している。社会保障制度の受益と負担のアンバランスを正すため、着実に改革を進めていかなければならない状況にある。一方で、経済面についても、人口減少・少子高齢化の進行、生産性と成長力の伸び悩みなど、数多くの課題への対応が求められている。また、依然として世界の経済社会に甚大な影響をもたらしている新型コロナウイルス感染症への対応も喫緊の課題である。こういった状況を踏まえれば、これまでの改革努力を継続・強化し、経済成長と持続可能な財政を両立させることが急務である。このため、令和4年度予算においては、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(以下「基本方針2021」という。)及び「経済財政運営と改革の基本方針2018」で示された「新経済・財政再生計画」(以下単に「新経済・財政計画」という。)の枠組みの下、手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組んでいく方針である。このような基本的な考え方の下、「令和4年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(以下「令和4年度概算要求基準」という。)が本年7月7日に閣議了解されたところである。令和4年度概算要求基準は、平成26年度から令和2年度までの7年間の仕組みと基本的に同様としつつ、「新経済・財政再生計画」の内容を踏まえたものとしており、具体的には、1) 予算の総額について、概算要求基準において決定するのではなく、予算編成過程において決定する仕組みとしている。2) 裁量的経費については、前年度予算よりも削減した額を要求することとしつつ、「基本方針2021」等を踏まえた諸課題に対応するため、「新たな成長推進枠」として別途要望を可能とする等、弾力的な仕組みとしている。3) 予算編成過程においては、歳出全般にわたり、これまでの取組を基調とした効率化を行い、施策の優先順位を洗い直し無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化していくこととしている。令和4年度概算要求基準のイメージは下図のとおりであり、その具体的内容については2.以降で説明する。2要求・要望について(1)年金・医療等年金・医療等に係る経費については、前年度当初予算額に、高齢化等に伴ういわゆる自然増(6,600億円)を加算した範囲内で要求することとしている。年金・医療等に係る経費について、「新経済・財政再生計画 改革工程表」に沿って着実に改革を実行していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組み、「新経済・財政再生計画」において示された「社会保障関係費については、基盤強化期間においてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す方針とされていること、経済・物価動向等を踏まえ、その方針を継続する」との考え方を踏まえつつ、その結果を令和4年度予算に反映させることとしている。(2)地方交付税交付金等地方交付税交付金等については、「新経済・財政再生計画」との整合性に留意しつつ要求することとしている。主計局総務課主計官 渡邉 和紀令和4年度概算要求基準の概要10 ファイナンス 2021 Sep.SPOT

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