ファイナンス 2021年9月号 No.670
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(2)適正かつ公平な関税等の徴収EPAの利用拡大に伴い、EPA税率の適用についての確認業務も増大すると考えられる。また、近年、消費税の脱税を目的とした金の密輸が多く発生していることや、令和元年10月に消費税率の引上げがあったことも踏まえると、徴税官庁としての役割が一層重要になる。(3)安全・安心な社会の実現テロ関連物資の流入阻止等は、これまで以上に国内外の関係機関との連携が重要。また、令和元年には不正薬物の押収量が3トンを超え、近年、知的財産侵害物品の輸入差止件数も高止まりしていることから、一層効果的・効率的な水際取締りが求められている。さらに、盗難自動車の不正輸出等、輸出の取締り強化も必要。以上のように税関を取り巻く環境の変化及び税関業務の多様化・複雑化に伴う対応を踏まえ、「スマート税関構想2020」では、「貿易の健全な発展」、「安全な社会」、そして「豊かな未来」を実現するための中長期ビジョンを、次の4つのキーワード(頭文字でSMART)に整理している。Solution(利便向上策)貿易関係事業者や旅客等へ、税関手続におけるコンプライアンスや利便性の向上を図るためのソリューションを提供することにより、一層適正かつ迅速な通関を確保することを目指す。Multiple-Access(多元連携)関係機関、貿易関係事業者等との情報連携を拡大・強化し、水際取締りの強化と貿易円滑化の両立を一層進展させることを目指す。スマート税関構想2020の施策ー2Resilience(強靱化)中長期的施策(1)災害等非常時に強いシステムの検討通関システムの更なる強靱化に向けた検討(2)海岸線等の監視取締りにおける先端技術の活用監視取締りの工夫及び無人航空機(ドローン等)や衛星情報等の活用の検討(3)審査・検査の在り方の検討統一的運用及び適正かつ円滑な通関の確保のための方策の検討短期的施策(1~3年)(1)被災等への備え(A)AIを使用した情報収集サービスの活用の検討(B)業務継続計画(BCP)の更新(C)定期的な訓練の実施(D)書類の散逸リスクの低減(2)柔軟な働き方のための環境整備通信環境の強化等によるテレワークの作業効率の向上Technology&Talent(高度化と人材育成)中長期的施策(1)先端技術の積極的な導入・利活用(A)先端技術の取込み、業務最適化、リソースの再配分(B)AIが活用できる分野の広範囲な模索(C)先端技術の活用可能性の探求(分散台帳技術、IoT、ドローン、仮想現実等)(D)知的財産侵害物品の取締り等に有益なAI活用の検討(E)業務への先端技術の活用範囲及びアウトソーシングの検討、並びにプライバシーの確保等への留意(2)インフラの整備(A)クラウドサービスの活用の在り方の検討(B)先端技術を使用した機器(X線CTスキャン検査装置等)の導入・活用についての研究・検討(3)業務改革(BPR)の検討RPA等先端技術の導入に伴う業務フローの見直し(4)AIやシステムに関する技術支援短期的施策(1~3年)(1)先端技術の積極的な導入・利活用(A)ビッグデータのAI解析(B)AIによるX線検査画像審査支援(C)RPAの活用(D)NQR装置(覚醒剤隠匿探知装置)(2)業務のデジタル化先端技術の活用のための業務のデジタル化及びデータ活用の検討(3)検討体制の整備及び人材の育成・確保(A)外部専門家も交え関税局・税関が一体となって先端技術を導入(B)税関自らの発意による民間技術との融合等を視野に入れた体制整備(C)先端技術やデータサイエンス分野の研修の実施及び人材の採用8 ファイナンス 2021 Sep.

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