ファイナンス 2021年9月号 No.670
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(5)先端技術の進展政府はAI、ロボット、ビッグデータ解析等の先端技術を産業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society 5.0」の実現を目指しており、税関も先端技術を積極的に活用していくことが重要となっている。また、5G(第5世代移動通信システム)サービスの開始や分散台帳技術(ブロックチェーン)を貿易分野に活用する動きも見られる。(6)国際治安情勢の変化海外でのテロ事件やテロ計画の摘発事案が続発していることに加え、密輸の巧妙化や国際犯罪組織が活発化する動きが見られる。今後、税関における水際取締りの役割はますます重要になると考えられる。環境の変化に対応し 税関の使命をどう果たすか以上のように税関を取り巻く環境が大きく変化するなかでも、引き続き3つの使命を適切に果たしていく必要がある。そのためには、これまで税関が軸足を置いていた業務に加え、業務の多様化・複雑化により、新たな対応が必要となる。そこで、税関の3つの使命を新しい対応が必要になると考えられる順に考察すると次のようになる。(1)貿易円滑化の推進モノやヒトの流れ等の変化が生じても、先端技術も活用しながら引き続き貿易円滑化を確保していくことが重要。また、ますます利用が拡大されるEPA税率の適用にあたり、必要となる情報を輸出入者へ適切に提供していく必要がある。さらに訪日外国人旅行者数の増加に備え、出入国の一層の円滑化、キャッシュレス化等も重要となる。スマート税関構想2020の施策ー1Solution(利便向上策)中長期的施策(1)税関手続の一層のデジタル化(A)出入国在留管理庁等との連携・情報共有の強化(B)減免税手続等のデジタル化(C)知的財産侵害疑義物品に係る認定手続のデジタル化(2)相談対応の利便性の更なる向上相談対応の自動応答プログラム等の活用検討(3)越境電子商取引への対応オートメーション化や事前情報の入手・活用を通じた検査等の効率化・強化、SP貨物に特化した申告、体制整備の検討短期的施策(1~3年)(1)Eゲート用アプリの改善及び利用向上のための周知(2)納税のキャッシュレス化クレジットカード等による納税の検討(3)EPAの利用支援原産地規則等に係る輸出入者への支援のための体制整備、情報発信の強化等(4)税関ホームページの改善Multiple-Access(多元連携)中長期的施策(1)関係機関との更なる連携出入国在留管理庁、警察、麻取、国税庁等との連携、情報共有(2)事業者との更なる連携AEO事業者を含む貿易関係事業者、電子商取引プラットフォーム事業者等(3)大学等との連携(4)外国税関等との更なる連携短期的施策(1~3年)(1)情報収集の強化貨物や旅客に係る事前情報の一層迅速かつ適切な入手・活用(2)情報収集の更なる効率化ウェブクローリング技術の検証、新技術の活用検討及び関係省庁との連携強化(3)協力関係強化のための環境整備テレビ会議システム等の導入 ファイナンス 2021 Sep.7公表から約1年が経過「スマート税関構想2020」進捗状況特集

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