ファイナンス 2021年8月号 No.669
52/84

リカレント教育をめぐる今後の展望・企業・就業者・教育機関それぞれの視点からリカレント教育が求められるが、三者のうち一つでも消極的な態度であるとリカレント教育の実施が大きく妨げられることから、その推進は必ずしも容易ではない(図表12)。・企業と連携してリカレント教育を実施している大学も存在するが(図表13)、学び直しが不足した際の負の影響が短期的に大きいのは企業や就業者であるため、まずは企業が、企業内リソースだけでは習得が困難な分野や業務に支障をきたさない受講形態を具体化しつつ、就業者の学び直しが促進されるよう教育機関と連携を図ることが求められる。三者がそれぞれリカレント教育の重要性を実感できるよう、その効果を実証するロールモデルを輩出していくことが肝要である(図表14)。(図表12)リカレント教育の推進を妨げる負のサイクルとその影響(図表13)企業と連携したリカレント教育の例(図表14)企業・就業者・教育機関が連携してリカレント教育を推進するモデルリカレント教育の効果を実証するロールモデルの輩出必要とされる知識・技能のすり合わせリカレント教育修了後の評価企業ニーズを提示し、共同でのリカレントプログラムの開発企業ニーズを反映させた教育の提供積極的な受講企業就業者教育機関(出典)厚生労働省「能力開発基本調査」、総務省「労働力調査」、佐々木英和「政策としての「リカレント教育」の意義と課題-「教育を受けなおす権利」を足がかりとした制度設計にむけて」、独)労働政策研究・研修機構「人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査」、株)パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」、株)リクルート リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」、イノベーション・デザイン&テクノロジーズ株式会社「社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究」、大前研一「稼ぐ力をつけるリカレント教育」、経済産業省「イノベーション創出のためのリカレント教育」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。名称内容早稲田大学「スマートエスイー」・AI・IoT・ビッグデータとビジネス応用を体系的に学び、国際的にも活躍できるイノベーション人材を育成する。・受講期間は半年。日本女子大学「リカレント教育課程」・育児等で離職した女性に、キャリア教育を通じて再就職の支援を行う。・受講期間は1年。高知大学「土佐フードサービスクリエイター人材創出事業」・実習・課題研究を通じて高知県の食品産業の中核を担う専門的人材を育成する。・受講期間は1~2年。学び直しおよびその推進・受け入れが不足した際の負の影響企業・事業を牽引するコア人材が社内で育たない就業者・年次が上がっても給与が上がらない・離職後の再雇用が困難になる教育機関・長期的には学生数の確保が困難になる就業者就業者の参加意欲が低い。参加障壁も高い。企業学び直しを推進せず、参加障壁が緩和されない。教育機関費用対効果が悪く、社会人向けプログラムの開講に注力しない。48 ファイナンス 2021 Aug.コラム 経済トレンド 86連載経済 トレンド

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る