ファイナンス 2021年8月号 No.669
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気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するため、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給の仕組みを導入することが適当と判断した。同年7月16日に公表された骨子素案では、資金供給の対象先を「共通担保オペ(全店貸付)の対象先のうち、気候変動対応に資するための取り組みについて一定の開示を行っている先で、希望する先とする」ことや、貸付利率はゼロ%、貸付期間は原則1年としつつ借り換えを可能とすることで実質的に、長期にわたるバックファイナンスを受けることが可能と示された。日本銀行はこの気候変動対応を支援するための資金供給を、2021年内を目途に開始し原則として2030年度まで実施するとしている。米国ではFedが2020年12月15日にNGFSに参加した。また、2021年3月19日に気候変動と金融安定化に関するメモ(Notes)を公表し、気候変動が金融にもたらすリスクの分析を行っている。ただ、パウエル議長は2021年6月4日のオンライン会議において「気候変動は金融政策決定の際に直接考慮するものではない」と述べる*5など、金融政策による気候変動対応については慎重な姿勢を示す。以上のように、各国の中央銀行の間で、気候変動問題への関心が広まりつつある。その動向について今後も注視が必要である。(注)文中、意見に係る部分はすべて筆者の私見である。*5) BIS, “The Green Swan Conference- Coordinating nance on climate”. ファイナンス 2021 Aug.45コラム 海外経済の潮流 135連載海外経済の 潮流

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