ファイナンス 2021年8月号 No.669
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の高いインフラ投資に防災・保健を加えて3本柱とし、これら重点分野の取組みにおいてIDB Invest・IDB Labを含むIDBグループ全体と協力するため、日本としてJSFに新たに2,000万ドルを拠出する旨を表明した。3アジア開発銀行(ADB)第54回年次総会(5月3~5日)ADB第54回年次総会は、当初、本年5月にジョージアのトビリシで開催予定であったが、IDB年次総会と同様に、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、5月3日から5日にかけてバーチャル形式で開催され、日本からは、ADB総務である麻生財務大臣が出席した。日本は、総務演説の中で、新型コロナウイルスによる危機からの脱却に向け、ワクチン・治療薬・診断薬の開発・製造・普及を一層促進し、途上国を含めた公平なアクセスを確保することが不可欠であり、浅川雅嗣総裁*4の強力なリーダーシップの下でADBが実施してきた緊急支援パッケージやワクチン支援イニシアティブ(APVAX)等の取組みを高く評価する旨に言及した。また、総務演説では、強靭で持続可能な復興に向けた、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進の重要性について指摘しつつ、アジア・太平洋地域においてUHCを支える(1)制度枠組の構築、(2)人材育成の強化、(3)インフラの整備から成る3本柱に係る支援を加速する観点から、日本として日本信託基金(JFPR)に新たに1,500万ドルを拠出することを表明した。更に、気候変動・防災への対応や、質の高いインフラ投資、国内資金動員、債務の透明性・持続可能性といった課題を重視している旨を示した。年次総会に併せて5月3日に開催されたADB総務セミナーには、麻生財務大臣がパネリストとして出席し、アジア・太平洋地域の途上国のコロナ禍からの復興に向けた課題として、UHCの促進や、気候変動への対応・防災、質の高いインフラ投資、国内資金の動員、債務の透明性・持続可能性の確保といった分野が重要である旨を指摘しつつ、浅川総裁のリーダーシッ*4) 本年4月26日、浅川ADB総裁は、現在の任期(~2021年11月23日)満了後の再選を目指す意向を表明した。これを受け、日本政府は、同日付で財務大臣談話を発出し、浅川総裁の卓越した指導力を評価するとともに、再選を支持する旨を示した。プの下で、こうした分野での取組みを継続してほしい旨の期待を表明した。更に、同日に開催された税に関するセミナーにおいても、麻生財務大臣より、租税分野での豊富な経験と国際租税等に関する優れた見識を有する浅川総裁のリーダーシップの下で、国内資金動員と国際租税協調の促進を目的としたリージョナル・ハブが設立されることを歓迎する旨のビデオメッセージを発信した。4アフリカ開発銀行(AfDB)第56回年次総会・アフリカ開発基金(AfDF)第47回年次総会(6月23~25日)AfDB第56回年次総会及びAfDF第47回年次総会は、当初、本年5月にガーナのアクラで開催予定であったが、他の機関と同様に、6月23日から25日にかけてバーチャル形式で開催されることとなり、日本からは、麻生財務大臣がビデオメッセージを発信するとともに、三村審議官(当時)が臨時総務代理として出席した。日本は、年次総会において実施された総務対話及び日本がパネリストとして参加した債務に関するハイレベルナレッジイベントにおいて、(1)債務措置に係る共通枠組の迅速な実施、(2)債務データの突合(debt data reconciliation)による債務データの透明性・正確性の確保、(3)秘密条項やnon-Paris Club条項などの不適切な契約慣行の是正が、アフリカの国々の利益になる点を強調した。また、総務演説の中で、アフリカにおける強靱で持続可能な成長に向けた取組みとして、債務の透明性・持続可能性の確保、気候変動や自然災害への対応、質の高いインフラ投資の促進の重要性を指摘するとともに、こうした取組みの前提として、AfDB自身が、透明性が高く信頼される国際機関であり続けるために、引き続き、ガバナンスの強化に取り組む重要性に言及しつつ、ガバナンス改革に関する暫定委員会による報告に期待する旨を示した。20 ファイナンス 2021 Aug.SPOT

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