ファイナンス 2021年8月号 No.669
23/84

1概要国際開発金融機関(MDBs)のうち、特定の地域における開発を支援する地域開発金融機関(RDBs)であるアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)、アフリカ開発銀行(AfDB)及び欧州復興開発銀行(EBRD)については、例年、春頃にそれぞれ年次総会を開催している。*1昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、春に予定されていた年次総会が延期されるとともに、ADB・AfDB・EBRDの3機関*2については、昨年8月から10月にかけてバーチャル形式*3で年次総会が開催された。本年は、各RDBsとも、当初の予定どおり、5月から7月にかけて年次総会を開催することとはしつつも、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、バーチャル形式での開催を決定した。これらの年次総会は、各地域の開発課題等について、加盟国・地域等が一堂に会して議論を行う重要な会議であるところ、開催順に沿って、概要を紹介したい。2米州開発銀行(IDB)第61回年次総会・米州投資公社(IIC)第35回年次総会(3月17~21日)IDB第61回年次総会及びIIC第35回年次総会は、当初、2020年3月にコロンビアのバランキージャで開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により2021年3月に延期されたところ、引き続き、通常通りの形式での年次総会の開催が困難な状況であることを踏まえ、本年3月17日から21日にかけてバー*1) 本稿において意見の表明に当たる部分は、筆者個人の見解であり、財務省、日本政府の意見を代表するものではない。*2) IDBについては、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、2020年は年次総会を開催せず、2021年に延期することを決定。*3) ただし、RDBsの事務局や議長国等、一部の出席者は、物理的に開催地で会議に出席。チャル形式で開催されることとなった。今回は、昨年10月に就任したマウリシオ・クラベルカロネIDB総裁下での初めての年次総会となり、同総裁の下で示された今後5年間(2021~2025年)のIDBグループのビジョンである「Vision 2025」等について議論が行われた。日本からは、三村審議官(当時)が臨時総務代理として出席した。日本は、総務演説の中で、IDBグループによる新型コロナウイルス対策を評価するとともに、「Vision 2025」を歓迎した上で、公的セクターと民間セクターのシナジー強化の重要性と、積極的な民間資金動員や組織運営の一層の効率化の必要性を指摘した。加えて、「Vision 2025」を効果的・効率的に遂行していく上で、望ましいIDBグループ全体の最適な組織構造や理事会によるチェックを含むガバナンスの在り方について議論する必要があり、今後更にメインストリーム化する民間セクター業務に、(IICのみならず)IDB本体がより主体的に関わるべき旨を発言した。また、年次総会に併せて3月19日に開催された多数国間投資基金(MIF(通称:IDB Lab))セミナーにおいては、麻生財務大臣より、IDB LabがIDBグループ全体に不可欠な「革新的実験室(innovation laboratory)」として機能しており、ポスト・コロナの復興では、このような革新的な技術を活用するIDB Labの役割が一層重要になる旨のビデオメッセージを発信した。更に、3月24日に開催された日本信託基金(JSF)の署名式には、中西財務副大臣がバーチャル形式で出席し、JSFの重点分野として、従来から掲げている質国際局開発機関課課長補佐 影山 昇*1地域開発金融機関(RDBs)の 年次総会について ファイナンス 2021 Aug.19SPOT

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る