ファイナンス 2021年8月号 No.669
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4対面開催ならではの特長感染対策を行いながらの大臣出張は苦労が尽きませんが、やはり国際会議は対面開催でしか得られない成果があります。まずは、参加者同士が相手の印象や人柄を良く知ることができる点です。前述の通り、今回の訪英では数多くのバイ会談が設定された上、大臣級同士・財務官級同士が親交を深める場も設けられました。例えば、麻生大臣は今回リシ・スナク英国・財務大臣とは初対面(写真(3))でしたが、「話をしていても、理屈はきちんと整然としているし、話が一方的に話し倒すというふうな感じでもないし、人の話はちゃんと聞いてまとめようとする」等と、まさに相手と対面で話すことで、オンライン上では分からない相手の人柄全般を知ることが出来たと語っています*2。こうしてG7の財務大臣が、対面で本音の意見交換を行うことで、G7が一致して世界をリードしていくとの力強いメッセージを発信できました。この点は、対面開催でしか得られない収穫であったといえます。写真(3)また、対面で参加することで、会合の交渉等は大きく捗りました。今回の会議では、現場で急遽専門家同士で集まり喧々諤々の議論を行い、合意を目指す場面もありました。加えて、時差に関係なく会合を開くことができた点もメリットの一つとして挙げられます。オンラインのビデオ会議では、どうしても時差に左右されてしまい、長時間国際会議を開くことが難しくなります。日米欧がオンラインで議論をしようとする*2) 令和3年6月5日(土)にロンドンにて行われた麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣記者会見での発言。と、米国は早朝、日本は夜の開催とならざるを得ず、交渉が長引くと、日本は徹夜の対応が迫られることもしばしばです。中には時差ボケに苦しむ職員もいましたが、滞在地の日中にまとまった時間をとって議論が行えることは、出張の大きなメリットといえます。5最後に2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、国際会議のあり方が大きく変容しました。オンライン開催が世界中で急速に普及し、その効率性と利便性が広く知られたのも事実です。しかし、今回のG7財務大臣会合では、対面開催ならではのメリットが改めて認識されました。麻生大臣は7月にも、イタリアのベネチアにてG20財務大臣・中央銀行総裁会議に参加されました。当面、海外出張では様々な防疫措置や人数規制が避けられませんが、安全な海外出張に向けてさらなる模索を続けていくことになります。18 ファイナンス 2021 Aug.新型コロナウイルス感染拡大後の海外出張について SPOT

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