ファイナンス 2021年8月号 No.669
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4おわりにASEAN諸国におけるCOVID-19の感染状況は各国で異なるものの、欧米諸国と比べると感染者数は抑えられており、2021年、2022年の経済は回復の兆しを見せている。他方、ワクチン接種の遅れや新たな変異株の蔓延など不安要素も多く、感染が再拡大する懸念は払拭されていない。これまで各国政府は、感染をコントロールするための制限措置と経済対策を実施してきたが、今後も感染者数を抑制することが可能なのか、経済活動の抑制が今後の中長期的な経済成長にどのような影響を与えるのか、世界経済が回復する中で新興国からの資本流出が悪影響を与えることがないか等、今後の動向についても、引き続き注視していく必要がある。ASEANワークショップは、2021年度で6年目を迎えるが、引き続き、本ワークショップの活動を通じて、各国の動向を注視し議論を深めていくことが重要と考えられる。経済対策と感染症対策の両立はどの国においても悩みのタネだ。このコラムでは、タイ、インドネシア及びベトナム各国のCOVID-19流行下における経済対策の概要を見ていきたい。ASEAN諸国の中で国際観光収入が最も大きいタイでは、入国制限の実施によって観光業が深刻な打撃を受けた。財務総研のASEANワークショップ(2021年2月)において、タイ財政政策研究所のAnantachoke次長からも説明があったが、タイ政府は、給付金を支給し個人消費を刺激するほか、旅行費用を補助する施策を実施し、国内の観光業者や飲食店の支援に重点的に取り組んでいる。インドネシアとベトナムでは、感染者数の推移が対照的であった。ASEAN諸国の中で、累計感染者数が最も多くなっているインドネシアでは、早期の感染者数抑制が求められた。同国では、「国家経済復興(PEN)プログラム」を策定し、2021年の予算額を前年実績の2割増となる699兆ルピアとしている。PENプログラムの予算のうち、保健関連分野には対前年比178%となる176兆ルピアが充てられ、ワクチン輸入時の関税の免除といった措置が取られている。一方、厳格な封じ込めにより感染者数を抑制してきたベトナムでは、生産工場の支援に資する施策が目立つ。米中対立を背景に輸出が好調であり、この流れを維持したいという狙いがあると考えられる。コラム(2):タイ、インドネシア、ベトナムの足元の経済対策(景気刺激策)図表5 FPRIの組織構成セクターにてを超える研究プロジェクトを実施している の組織体制は、①経済政策、貿易、投資に関する部門、②マクロ経済、金融、データ分析に関する部門、③財政、社会政策に関する部門の部門が柱となる。その他、研修やセミナーを担当するトレーニング部門等も備わっている(図表)。 図表の組織構成 .おわりに諸国におけるの感染状況は各国で異なるものの、欧米諸国と比べると感染者数は抑えられており、年、年の経済は回復の兆しを見せている。他方、ワクチン接種の遅れや新たな変異株の蔓延など不安要素も多く、感染が再拡大する懸念は払拭されていない。これまで各国政府は、感染をコントロールするための制限措置と経済対策を実施してきたが、今後も感染者数を抑制することが可能なのか、経済活動の抑制が今後の中長期的な経済成長にどのような影響を与えるのか、世界経済が回復する中で新興国からの資本流出が悪影響を与えることがないか等、今後の動向についても、引き続き注視していく必要がある。ワークショップは、年度で年目を迎えるが、引き続き、本ワークショップの活動を通じて、各国の動向を注視し議論を深めていくことが重要と考えられる。アドバイザー(名誉顧問等)副所長副所長トレーニング部門 研究調査支援部門 所長理事会① 経済政策・貿易・ 投資部門 ③ 財政・社会政策部門 ② マクロ経済・金融・ データ分析部門(出所)提供資料を基に筆者作成(出所)FPRI提供資料を基に筆者作成(1)(2)(3)14 ファイナンス 2021 Aug.SPOT

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