ファイナンス 2021年8月号 No.669
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事態宣言期間中であったため、会議室内の参加者を極力限定した上で、パーテーションの設置や消毒等、入念な感染症対策が施された。最初に、FPRIの次長(Dr. Anantachoke Osangthammanont)より、「タイのマクロ経済情勢」と題した発表が行われた。その中では、COVID-19の感染拡大後のタイにおける各産業セクターの概況やタイの財政政策、FPRIが独自に試算した経済成長率の見通しなどについて説明が行われ、2021年のタイ経済は、COVID-19の影響に加え、中小企業の債務問題や米中貿易摩擦等、依然として懸念材料が多いことが指摘された。続いて、FPRIの上級調査員(Dr. Wanasin Sattayanuwat)より、「コロナ後のASEAN貿易」と題した発表が行われた。ASEANの貿易構造に関するEUやNAFTAとの比較、医療用手袋やマスク等の医療関連製品の輸出入の変化等について説明があった*8。ASEANワークショップの様子(2)FPRIの組織概要等財務総研とFPRIの繋がりは、2015年6月に東京で開催した、第1回東京財政フォーラムまで遡る。その際には、FPRIより「タイにおける財政の長期推計」をテーマとした発表が行われている。その後、先方と共に将来的な研究交流の可能性を協議する中で、今回のワークショップ開催が実現した。FPRIは、2001年5月にタイ財務省の支援の下に設*8) 当日の資料(https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2020/asean2020.htm)立され、現在もタイ財務省の管轄にある。元々、1997年のアジア通貨危機をうけ、タイ政府への金融政策支援等を目的に設立された組織であり、2021年4月現在、約60名の職員(内、研究者が約10名)を有し、本部はバンコクに所在する。FPRI(バンコク)の本部ビル(出所)FPRIより提供事業内容は、大きく(1)経済、金融、財政分野における政策研究・提言、(2)国際協力の促進、国際機関との協業の2つから成る。FPRIでは研究活動が活発に行われており、設立以来、民間・公共の両セクターにて350を超える研究プロジェクトを実施している。FPRIの組織体制は、(1)経済政策、貿易、投資に関する部門、(2)マクロ経済、金融、データ分析に関する部門、(3)財政、社会政策に関する部門の3部門が柱となる。その他、研修やセミナーを担当するトレーニング部門等も備わっている(図表5)。 ファイナンス 2021 Aug.13ASEAN3ヵ国のコロナ禍の情勢と財務総研ASEANワークショップの活動報告SPOT

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