ファイナンス 2021年8月号 No.669
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1はじめに財務総研では、アジア諸国に関する研究活動として、中国やインド、ASEAN各国の経済情勢等の理解を深めることを目的に、有識者との情報・意見交換会を定期的に開催している。本稿では、インドネシア、タイ、ベトナムの3ヵ国(以下、ASEAN主要3ヵ国)の新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の状況及び経済情勢を概観した上で、2021年2月に開催した財務総研のASEANワークショップにおけるタイ財政政策研究所(Fiscal Policy Research Institute Foundation)との直近の研究交流の内容を紹介する*1。2ASEAN主要3ヵ国のCOVID-19感染状況と経済情勢(1)感染状況2019年末に中国で確認されたCOVID-19は、国際的な人の往来から全世界へと感染が広まった。ASEAN諸国は、地理的にも中国と近く、人的交流も多いにもかかわらず、これまでの感染者数は、比較的*1) 本稿の意見に係る部分は、全て執筆者の個人的見解であり、財務省及び財務総研の見解でない事をお断りさせていただく。また紹介する情報(感染者数、経済データ等)については、あくまで執筆時点(2021年4月末時点)での情報であることをお含み置きいただきたい。*2) 2021年4月以降、インドネシアなどの一部の国では変異株が広がり、感染の急拡大が見られる。抑えられている*2。図表1は、ASEAN9ヵ国と主要国における人口100万人当たりの累計感染者数のグラフである。同感染者数は、アメリカを筆頭にフランス、スペインなどの欧米諸国で6万人以上となっているのに対し、ASEAN9ヵ国においては、最も多いマレーシアであっても、その数は約1.2万人である。一部のASEAN諸国では感染者の把握が十分に行われていない点も考慮する必要があるが、おおむねASEAN諸国の感染者数は抑制されてきたと言える。次に2021年4月末時点におけるASEAN9ヵ国の累計感染者数の推移(図表2)を見てみると、ASEAN9ヵ国で最も人口が多いインドネシア、2番目に人口が多いフィリピンが上位に来ているが、次いで人口の多いベトナム、タイは下位に位置している。ASEAN域内の感染者数は、人口の多寡に必ずしも相関してはおらず、各国の感染症対策の違いなど様々な要因により差が生じていると考えられる。インドネシアでは、2020年3月2日に国内初の感染者が確認され、2021年4月末時点の累計感染者数ASEAN3ヵ国のコロナ禍の情勢と財務総研ASEANワークショップの活動報告図表1 ASEAN9ヵ国と主要国の100万人当たり累計感染者数(2021年4月末時点)0100,00090,00080,00070,00060,00050,00040,00030,00020,00010,000アメリカフランススペインイタリアイギリスドイツロシアインドマレーシアシンガポールフィリピンインドネシア日本ミャンマータイカンボジアラオスベトナム(人)(出所)The Humanitarian Data Exchange及び国際連合を基に筆者作成国際交流課 研究員 金井 優洋/国際交流課 前係員 北澤 湧理国際交流課 研究官 中島 賢作/国際交流課 研究員 町田 孝陽10 ファイナンス 2021 Aug.SPOT

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