ファイナンス 2021年7月号 No.668
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一つ目は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業・事業者への強力な支援。資金繰り支援や資本性劣後ローンの供給等を予定している。二つ目はイノベーションの大胆な加速と事業再生・構造転換の支援。ポストコロナを見据えて、医療分野等のイノベーションに向けた投資を加速していく。三つ目は低金利を活用した、生産性向上や防災・減災、国土強靭化等に資するインフラ整備の加速。地域のライフラインや排水関連インフラの支援等を行っていく。ポストコロナに向けて メリハリのある資金供給へ過去の財政投融資計画の推移を見ると、コロナ禍の影響で令和2年度の金額が飛び抜けて多くなっている。例年は15兆円規模だが4倍を超える66.5兆円に及んだ。これは当初予算13.2兆円に対して、補正予算などで53.3兆円が上積みされたものだが、令和3年度は当初予算として40.9兆円を計画しているのが特徴となっている。これにより、コロナ禍での緊急的な対応に加え、ポストコロナを見据えた投資を実施していく予定だ。ポスト/ウイズコロナ時代に向けた経済構造の転換のためには、メリハリのあるリスクマネーの供給が重要になる。「ハリ」の部分では、コロナワクチンの開発など医療分野を始めとするライフサイエンス等の新たな成長分野や事業再生・構造転換への投資に大胆に資金を重点的に配分する。また、地方創生の観点から、コロナ禍でリモートワークが浸透しつつあるため、地域企業支援にも力を入れていく。一方、「メリ」の部分では、累積赤字の大きい官民ファンドを見直し、政策性や収益性の高い事業に経営資源を集中していく。このようなメリハリ付けは、(1)政府全体の方針、(2)社会・経済情勢、(3)これまでの実績、の3点を踏まえて行われている。次ページ以降では、ポスト/ウイズコロナ時代に向けた取り組みの中から医療産業支援と地域企業支援を紹介しよう。財政投融資計画額の推移40.532.513.915.914.917.618.416.214.613.515.114.513.113.240.9[32.9][20.6][19.0][16.5][14.9][17.9][15.9][15.1]81320212324252627282930元23010203040506070[15.2]当初計画額改定額(補正+弾力)当初計画過去最大財投改革後初年度リーマン・ショック(参考)東日本大震災[16.6][23.9][19.1](兆円)[66.5]新型コロナウイルス感染症対策等平成(年度)令和(注)1 当初計画ベース。[ ]は補正による改定額及び弾力追加額を加えた計数。2 平成8年度は、一般財政投融資ベース。 ファイナンス 2021 Jul.5ポストコロナに向けて財政投融資が果たす役割~令和3年度財政投融資計画から~特集

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