ファイナンス 2021年7月号 No.668
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長崎市(2)旧庁舎ア 長崎税関下り松派出所(国指定重要文化財)明治時代に建造された唯一残っている長崎税関関連の建物が1898年(明治31)に竣工した「長崎税関下り松派出所庁舎」です。当時この庁舎は税関の「荷改所」として輸入貨物の検査に使用されていました。1990年(平成2年)に国の重要文化財に指定され、保存修理工事が行われた後、現在は長崎市べっ甲工芸館として、べっ甲工芸品や税関資料の展示に使用されています。建物はレンガ造り、平屋建てで小規模な建物ですが、検査場・倉庫・事務室など当時の税関施設の状況をよく伝えており、海岸通りの景観形成にも重要な役割を担っています。長崎税関下り松派出所(現 長崎市べっ甲工芸館)イ 長崎税関本関旧庁舎(ライオンの塔)1928年(昭和3年)から1943年(昭和43年)まで使用された本関庁舎は、玄関は御影石の柱、壁や階段の手摺は大理石が使われた英国調のクラッシックな建物でした。2階建ての庁舎の上に建つ塔屋には見張り台があり、ライオンが首を真っ直ぐに立て港を監視するようにデザインされていたことから「ライオンの塔」とも呼ばれていました。この建物は1945年(昭和20年)8月の原爆投下により甚大な被害を受けましたが、同年9月長崎港に上陸した連合国軍に接収され司令部が置かれました。この時、連合国軍は9月11日午前11時頃庁舎に来て内部を検分し、同日正午頃長崎県を通じ、翌12日午前8時までに庁舎を明け渡すよう通告してきたそうで、接収の通告後に職員は夜を徹し、事務に必要な机や椅子等を運び出しましたが、退去時間が非常に短く、多くの書類、書籍、備品等が散逸したとの記録が残っています。(3)税関資料展示室(税関特別展)長崎税関1階には資料展示室があり、長崎税関の歴史や仕事をパネルや展示物で紹介しています。今年4月27日から来年3月31日までは、常設展示に加え長崎開港450周年を記念した特別展を行っており、税関監視艇の元祖ともいえる長崎奉行用船のコーナーや「長崎港と長崎税関の歴史」をまとめたパネルの展示も行っています。このパネルは開港450周年記念事業に合わせ税関の若手職員が長崎の歴史や貿易を調査し分かりやすくまとめたものです。その他、今回初公開となる「税関官吏執務提要その1(明治44年)」には、明治時代の税関職員が密輸入を発見した場合の事務手順などが記載されています。税関特別展のPR用チラシ(表面と裏面)旧本関庁舎上部の塔屋が「ライオンの塔」84 ファイナンス 2021 Jul.連載各地の話題

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