ファイナンス 2021年7月号 No.668
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事業量ベースでIADBの13億ドルの増加、EIBの32億ドルの増加、貸出残高ベースでのAFDの前年比47億ドルの増額も全くもって小さくない*19。チャート3は、前年からの事業量の増額幅を抜き出したもので、KfWの増額が圧倒的に大きいこととなるが、チャート2-2で見た通り、そもそもKfWの年間事業量1,353億ユーロの内79%がドイツ国内向けであり、途上国向けは9%、124億ユーロである。年間事業量の増額幅580億ユーロの内、開発関連業務の増額は18億ユーロとなっており、基本的にKfWのバランスシート拡大はドイツ国内向けがほとんどであったことがわかる。チャート3:前年比事業量増加幅0700600500400300200100KfWIDAIBRDADBAIIBEIBIADB6631977676503213(億ドル)加盟国向けが多くを占めるEIB、ドイツ国内向けが多くを占めるKfWを除き、MDBsと狭義の開発を実施するバイの機関を貸出残高の増加幅で一覧とすると、IBRDが前年比+199億ドル、IDAが前年比+180億ドル、ADBが前年比+151億ドルとなっており、以下IADB+80億ドル、AIIB+60億ドル、AFD+48億ドルとなっている(2020年末時点と前年の比較)。チャート4:前年比貸出残高増加幅(EIB、KfW除く。)025020015010050IBRD199IDA180ADB151IADB80AIIB60AFD47(億ドル)*19) 非営利のシンクタンク・グローバル開発センターが、リーマンショック(GFC:Global Financial Crisis)時のMDBsのコミットメント増加率(+76%、2005-2007年と2008-2009年の平均コミットメント額比較)と、今回のパンデミックを受けたMDBsのコミットメント増加率(+39%、2019年と2020年のコミットメント額比較)の比較及び危機の程度(GFC時が途上国、新興国のGDPは減速であったが、2020年はマイナス成長)を重ね、危機対応としても、SDGs目標達成のためにもMDBsの対応は十分ではないとするレポートを出している。https://www.cgdev.org/publication/mdbs-rescue-evidence-covid-19-response*20) 割引率は5%(IMF、世銀の理事会は、2013年10月、個別ローンにおけるグラントエレメント計算に際して、統一の割引率を適用することとした)。(2)ヘルスセクター等の規模・増加幅今般のCOVID-19パンデミックを受け、各開発金融機関がそれぞれ年間に承諾したヘルスセクター事業の規模を、それぞれの機関ごとに前年と比較するとテーブル4のようになる。世界銀行グループ(IBRD、IDA)は、2020年6月までの一年間の承諾額を前事業年度と比較しており、ADB、IADB、EIB、AFDは2020年末までの一年間の承諾額を前年と比較している。またEIBはヘルスセクターと教育セクターを合算してヘルス・教育セクターとしている。時点と範囲が異なるため機関同士の比較には適さないが、一覧にすると以下のとおり、それぞれパンデミックを受け大幅にヘルスセクター向けの事業を組成、承認した姿となっている。テーブル4:ヘルスセクターにおける各機関の事業増加(億ドル、%)20192020差%IBRD174023135%IDA174326153%ADB63529483%IADB3.56.22.777%EIB394409154%AFD6137129% 4 譲許性について(1)譲許性ローンの条件比較開発の文脈で譲許とは、譲許性ローンのように用い、長期間、低利で貸し出しを行うことを指す。貸出期間(Maturity)、返済猶予期間(Grace period)が長く、金利(Interest rate、ただしサービスチャージを含む)が低く、元利の返済が後ろ倒しになればなるほど、そして、コミットメントフィーなどの手数料が低いほど、譲許性が高いローンとなる。譲許性を比較する指標がグラントエレメント(貸出額を100とした場合「貸出額」と「元利返済キャッシュフローの現在価値*20」の差と考えると分かりやすい。グラントエレメントが60%とは、100の貸出に対して現在価値で40しか返済されず、すなわち贈与74 ファイナンス 2021 Jul.連載海外 ウォッチャー

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