ファイナンス 2021年7月号 No.668
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2020年度では恐らく上回るのではないかと思います。日本企業全部が束になってかかっても、研究費において、米国のたった5社に敵わなくなるということが現実に起きつつあります。日本で作られるデータも大半はこのGAFAMの中に集約されてしまい、そのデータを使ってデータドリブンで産業をアップデートし、日本はこれまで以上に追いつくことができなくなる、ということがこれから起きるのではないかと予測しています。IT企業、インターネット企業のみならず、日本産業そのものが危機的状況にあるというのが我々の危機意識です。これは、最後は法人税あるいは経済成長の問題につながりますので、財務省にも危機的状況と捉えてほしいし、我々のこと応援してほしいと思っています。(3)もう一つの選択肢我々としては、GAFAと対抗するにあたり、まず日本にフォーカスしたいと思っています。日本に住む人にGAFA以外のもう一つの選択肢を提供していきたい。使う人にとって最も使いやすい、まさにユーザーファーストであり、あるいは最も安心してデータを預けられるといったサービスを提供することによってGAFAと戦っていきたいと思っています。日本国内の会社だからこそ届くような分野にも、徹底的に、重点的に進出していきたいと思っています。例えば行政のDXやオンライン医療、フィンテックの分野です。行政サービスや診療をオンラインで受けたい、あるいは自分の金融資産を増やしたい、といった日本に住む人々の要望に応えるサービスを我々は行政と連携して重点的に行い、GAFAと差別化したいと思っています。(4)二つの課題ア.研究開発税制しかし、課題が二つあります。一つ目は研究開発に関する税制面です。試験研究費税額控除制度の対象となる試験研究費に含まれる人件費の「専ら」要件は、現行制度においては控除対象が研究開発を専業でやっている人に限られていますが、インターネットサービスの場合は、サービスを動かしながら研究開発を行っているため税制面の効果が得られません。更に、日本ではサービス業の研究開発に関して税務上では資産計上となっているため、短期で一気に研究開発を行ってGAFAと勝負をしたいときには不利になります。イ.電気料金二つ目の課題は電気料金です。IT産業あるいは既存の産業をデジタル化することによって最もコストがかかるのが電気料金になりつつあります。福島第一原発事故以降の電気料金の値上げ、そして、再生可能エネルギー、グリーン化のトレンドの中で「グリーン化もできなければ、値段も高い」のが今の日本の状況です。こうした中、日本にデータセンターを作っても大丈夫か、という課題が我々にはあります。再生可能エネルギー、グリーン化について、GAFAは既に100%達成しています。それに対して日本の場合、再生可能エネルギー100%調達が価格の面でも、発電量に関しても難しい状況です。ヤフージャパンの現状では、米国に持っているデータセンターは100%再生可能エネルギー化していますが、日本国内においては全くできておりません。今の日本の電気料金は韓国よりも高いのです。我々は、2023年に国内のデータセンターも100%再生可能エネルギーに切り替え、テナントのデータセンターにはグリーン電力証書を買うことを決断しました。これはコスト増に間違いなくつながりますので、住民のデータを保護するため、再生可能エネルギーデータセンターの国内設置を推進する上で、ぜひ国として電気料金を下げるということに取り組んでいただきたいと思います。(5)Zホールディングスの志最後に、我々の志を述べたいと思います。2021年3月にヤフーとLINEは統合します。まずは日本に住む人々にユーザーファーストで最高のユーザー体験というものを提供し、かつ、公共部門の社会的課題にも、国内最大級のプラットフォーマーだからできる立場で積極的に協力をしていきたいと思っています。そして、そこで得られた新たな知見をもって、日本を起68 ファイナンス 2021 Jul.連載セミナー

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