ファイナンス 2021年7月号 No.668
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(2)効果測定インターネット産業・デジタル産業は、効果測定技術を徹底的に活用することによって大きくなりましたし、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)は「効果測定の塊」の企業です。したがいまして、公共部門のデジタル化を進めて効果測定を行えば、絶対に日本の財政問題の解決につながると思います。ア.公共部門のデジタル化最初に行うべきことは、公共部門をデジタル化することだと考えています。国民が行う行政上の各種手続、それと政策、そして住民、これらを全てデジタル化して連携させることによって、データが溜まっていくというのが大前提になります。住民はマイナンバー制度、そして、各種政策にも政策ナンバーをつけて効果測定を実施しやすいようにすることが望まれます。政策に関する活動がデータ化されると、予算に対する効果が明確になります。少なくとも我々インターネット産業では、1円に至るまで使われた費用とその効果が紐付けされてリアルタイムで把握できますので、国でも同じようなことができると思います。データを把握して効果測定を行った結果、効果の低い政策は予算を削減して最適化することができるというのは当たり前のことですが、当然それだけで財政が健全化されるとは思っておりません。やはり経済成長、少なくとも名目経済成長率が上昇しない限り日本の財政再建は無理だと思っています。予算削減だけではなく、むしろ、予算を効果的に使うことで経済成長につなげることがポイントではないかと思います。PDCAサイクルをぐるぐる回していくことによって、無駄な予算を削減し、それを効果の高い政策に使うことで経済成長を実現し日本の財政再建を果たす、このことに私は大変関心を持っていますし、ぜひ財務省としてデジタル化を主導してこれをやり遂げていただきたいと思います。イ.多種・大量のデータデジタルのサービスというのは、オフラインであるリアルのサービスに比べて、多くの種類のデータを取得することができるということが特徴の一つです。リアルのサービスでは、例えばコンビニでは、レジで店員が顧客を見て年代「五、六十代」、性別「男性」とPOSで打ちデータ化しますが、満足度を調べるためには、別途アンケート調査をする方法しかありません。一方、デジタルのサービスでは、サービスから自然に年齢や性別だけでなく、お気に入りの記事が何であるか、他のどのようなサービスを使っているのか、滞在時間はどれぐらいか、など様々なデータの取得が可能であり、データ量がまるで違います。もう一つの重要な特徴は、リアルタイムでデータが取得できることです。「大量のデータをリアルタイムで取得できる」、これがデータに基づく効果測定の第一歩だと思います。ウ.KGI-KPIツリーそれでは、具体的にデータをどう管理していくのでしょうか。様々なデータを取得しても、正しく利用できなければ欲しい効果は得られません。インターネット企業では、正しくデータを利活用するためにKGI-KPIツリーを構築しています。KGIとは、Key Goal Indicatorの略でサービスの最終的な目標、KPIとは、Key Performance Indicatorの略でKGIに至る道筋です。データから得られる気づきは何か、それらのうちサービスの成長に重要なものは何かを構造的に整理することで、目標や効果を明確化しています。要因を分解することは当たり前かもしれませんが、オフラインの商品やサービスでは難しく、売上げが下がった場合でも、その原因がよく分からないのです。適切な解決策が分からないまま取りあえずテレビCMを打ってみようとしたり、あるいは売上げが下がっていること自体を把握するのに、かなりの日数がかかるということもリアルの産業では多々あります。こうしたリアルの産業にありがちな無駄なコストや時間を、ネット産業の場合はデジタルをデータ化、データドリブン化することによって、スピーディーかつ効率的にそれを発見して改善につなげることができます。KGI、KPIツリーの管理方法は、非常に優れているとの認識を私は持っています。エ.積み重ねで効果が複利で向上このKGI、KPIツリーに基づき様々なデータを利活 ファイナンス 2021 Jul.65職員トップセミナー 連載セミナー

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