ファイナンス 2021年7月号 No.668
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運賃の低い契約運賃の割合が高く、また製品価格に占める輸送コストの割合が小さいことから、物価上昇は運賃高騰ではなく欠品によるものと考えられる。2021年3月に発生したスエズ運河座礁事故の発生により、港湾混雑の解消の時期の見通しは2021年夏から9月以降へと伸びている。今後のコンテナ市況について、2021年の運賃契約更改も値上げの方向で進んでいるが、コンテナ市場は供給過剰に陥りやすいことや、環境対策投資の課題があることに留意すべきである。スエズ運河の再開通後も、スエズ運河を迂回した船舶と再開後の船舶が同時に欧州に到着していること等を受けて、北米・欧州航路は混雑が続いている。港湾混雑を受け、直近(2021年5月)の北米東岸や欧州航路等におけるスポット運賃は急上昇しているものの、現在の運賃の維持は不可能であると考えられ、船社にとっては、どのように平常時の市況に戻していくかが課題である。日本におけるコンテナ輸送の課題として、日本の主要輸出品目が自動車部品等のB2B品目であることおよび日本発着航路は契約運賃のシェアが大きく運賃が低いことがコンテナ不足の影響を顕著にしたことが挙げられる。さらに運賃が低いことでコンテナ確保に関して買い負けた側面があり、今後、コンテナ不足等の問題を回避するためには、いかに輸送コストを消費者に転嫁するかが重要である。3.終わりに今回は、オンラインかつ短時間ではあったものの、新型コロナウイルス感染拡大が貿易および国際物流に与えた影響や課題について理解を深めることができ、意義のあるものとなった。最後に、本ワークショップに多大なる貢献をいただいた発表者、出席者、ならびに共催者である日通総研その他関係者の皆様に厚く御礼を申し上げる。 ファイナンス 2021 Jul.63シリーズ 日本経済を考える 114連載日本経済を 考える

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