ファイナンス 2021年7月号 No.668
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の輸入である。これらの品目の輸入量・輸入額は、2020年2月・3月に中国での生産・物流の停滞を受けて急減し、4月以降は中国での生産体制の回復と増産に伴い、コロナ前の水準を超えるまでに増加している。以上より、中国と日本との間で感染拡大のタイミングにずれがあったことから、日本で衛生用品などの需要が高まる頃には、中国では生産・輸出体制が回復に向かっており、結果として日本国内での供給不足は一時的なものに留まった。(2) 「新型コロナウイルスワクチンを巡る貿易上の課題」(発表者:曽我主任研究官)世界の新型コロナウイルスの感染拡大状況およびワクチン接種完了率の現状について概観すると、2021年1月以降、北米・欧州の感染者数は減少している一方、インドの感染拡大を受けて2021年3月以降、アジアにおける感染者数が増加している。ワクチン接種完了率は、北米・欧州が高い一方、アジア・アフリカは低く、地域・国家間においてワクチン接種完了率の格差が生じている。次に、ワクチンの貿易上・物流上の課題として、ワクチンおよび関連物品のサプライチェーンについてみると、ワクチンおよび主成分の製造は、欧州や米国、インド等の少数の国に集中しており、また、ワクチンの製造・運搬に関連する注射器や冷凍庫、アイスボックス等の製品の生産シェアは中国、米国、ドイツ等が上位を占めている傾向がみられた。貿易上の課題として、EUによるワクチンの輸出許可の義務付けの措置や米国によるワクチン原材料の輸出制限措置等の問題があり、ワクチンなど、人命にかかわる緊急性の高いケースについては、各国が輸出制限措置をとることによって、円滑な貿易が行われにくくなる事態も想定される。また、主要なワクチンは-75℃または-20℃と超低温での輸送・保管が求められており、設備等が整備されていない途上国におけるコールドチェーン物流の確保が課題である。2.2  ブロックチェーンを活用した貿易金融プラットフォームの現状(発表者:財務総合政策研究所副所長 高見博)貿易実務者は慢性的に人材不足であり、コロナ禍では書類ベースでの業務が中心で在宅勤務の導入が難しいという課題も顕在化した。その中で、数年前から実証実験を行っていたNTTデータ株式会社を中心に、商社、金融、物流等の企業が、貿易情報連携プラットフォーム“TradeWaltz”への共同出資を行い、書類の電子化、貿易金融サービスの展開、NACCSとの連携等、効率化と利便性向上に向けた取組みを推進している。さらに、ASEAN諸国への展開も予定されており、今後の動向が注視される。 ファイナンス 2021 Jul.61シリーズ 日本経済を考える 114連載日本経済を 考える

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