ファイナンス 2021年7月号 No.668
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コラム 経済トレンド85大臣官房総合政策課 調査員 深澤 瑛介/川原 竜馬/岡 昂一郎日本のコンテナ港湾について本稿では、日本のコンテナ港湾について考察を行った。世界における海上コンテナ輸送の潮流・近年、市場や生産拠点のグローバル化に伴い、世界各地域において貿易額が大きく増加している。それに付随して、アジアを筆頭にコンテナ取扱個数も増加傾向にあり、リーマンショック直前の2008年から2019年までの約10年間でみても世界の港湾におけるコンテナ取扱個数は1.5倍に増加している(図表1)。・足元では、コンテナ取扱個数増加への対応のために、コンテナ船の大型化が年々進行しており、現在は船長400m、最大積載量24,000TEU(2008年対比2.0倍)の船舶が世界最大の船舶として就航中である(図表2)。・海外の主要ハブ港湾は、大型化するコンテナ船を受け入れるべく港湾の整備・拡張や、外国企業誘致の一環として港湾周辺地での物流団地・産業団地の造成に取り組むなど、自国へ貨物を集積させ、競争力を高めてきた。結果として、一度に受け入れるコンテナ取扱量が増加し、コンテナ輸送の効率化がすすめられている(図表3)。(図表1)コンテナ取扱個数の推移アジア日本北米欧州その他8.05.20.08.07.06.05.04.03.02.01.0'00'02'04'06'08'10'12'14'16'18(億TEU)(図表2)コンテナ船の大型化の推移738 12,508 24,000 025,00020,00015,00010,0005,000'70'80'90'00'10'20'65'75'85'95'05'15'60(TEU)(図表3)岸壁の整備水準(2018年) (水深16m級バース総延長/コンテナ取扱量)0.02.04.06.08.09.07.05.03.01.0オランダドイツベルギー韓国スペインイタリアマレーシアUAEシンガポール中国香港アメリカ日本インドインドネシアブラジル(出典)THE WORLD BANK Container port trac (TEU:20 foot equivalent units)、国土交通省「港湾・海運を取り巻く近年の状況と変化」、国土交通省「港湾の中長期政策「PORT 2030」~参考資料集~」、国土交通省「水深16m級のコンテナ岸壁の整備水準について」日本における港湾情勢の変遷・日本の港湾を見てみると、日本の各港湾におけるコンテナ取扱貨物量はほぼ横ばいであり、上海を筆頭とした他のアジア主要港の伸びに比べると見劣りする(図表4)。・かつては、日本が世界の中で製造業の大きな生産拠点であったこともあり、神戸港や京浜港は世界でも有数の主要コンテナ港湾であった。しかし、次第に日系企業の海外進出が進み、生産拠点が中国やASEAN地域へ徐々にシフトしたことで、日本の港湾に自然と貨物が集まる環境ではなくなってきてしまった(図表5)。実際に世界の港湾ランキングで見ても、順位を大幅に落としている(図表6)。・その流れの中で、基幹航路船の日本の港湾への寄港数が減少し、周辺国の主要港湾へシェアを奪われていった。特に日本と立地面で競合する釜山港が伸びている一方で、京浜港および阪神港は右肩下がりなことが見て取れる(図表7)。(図表4)世界の主要港湾のコンテナ 取扱貨物量の推移045,00040,00035,00030,00025,00020,00015,00010,0005,000'08'09'10'11'12'13'14'15'16'17'18'19(千TEU)上海シンガポール釡山東京+横浜大阪+神戸(図表5)製造業の海外生産比率の推移2723191509101112131415161718(年度)(%)(図表6)世界の港湾ランキング1980年順位港湾名コンテナ取扱貨物量(千TEU)2019年順位港湾名コンテナ取扱貨物量(千TEU)1ニューヨーク1,9471上海43,3032ロッテルダム1,9012シンガポール37,1953香港1,4653寧波27,5304神戸1,4564深セン25,7705高雄9795広州23,2366シンガポール9176釜山21,9927サンファン8527青島21,0108ロングビーチ8258香港18,3619ハンブルグ7839天津17,264・・・・・・13横浜72239東京4,51016釜山63461横浜2,99018東京63267神戸2,87139大阪25480大阪2,456(図表7)周辺国の主要港湾における 基幹航路の寄港数の推移0908070605040302010'10'13'16'17'18'19'20釡山(寄港回数/週)'10'13'16'17'18'19'20京浜'10'13'16'17'18'19'20阪神747569787980815338353133333422191413131414大洋州航路アフリカ航路中南米航路欧州航路北米航路(出典)日本港湾協会 港湾政策研究所HP、経済産業省「第49回 海外事業活動基本調査概要」、国土交通省「世界の港湾取扱貨物量ランキング」、国土交通省「港湾・海運を取り巻く近年の状況と変化」54 ファイナンス 2021 Jul.連載経済 トレンド

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