ファイナンス 2021年7月号 No.668
38/92

医療費、教育費、住宅費などの自己負担やワークライフバランスのとりにくさがネックであり、保育政策や家族政策をはるかに超えた範囲の社会の仕組みを改善することが必要である(図表6)。図表4 ケアダイアモンドにおける4方向の脱家族化と家族化⑤④⑥MarketStateCommunityFamilyRelatives■第2章「 労働市場からみた少子化問題 ―福祉資本主義類型論からの対応策―」山田久(株式会社日本総合研究所副理事長・主席研究員)家族・保育・積極的労働政策など現役世代への社会保障支出を引き上げ、そのコストを賄う社会保障・税制度の再構築が必要日本と韓国の少子化の原因は、世帯主が多い男性の雇用・収入が不安定化し、低所得家計で未婚化が進行し、女性の社会進出と子育ての両立を可能にする環境整備が遅れ、家事・育児の女性偏重の家族関係が存在していることが要因となっている。家族が抱え込むコストを社会化し、国家がケアに積極的な責任を果たす北欧(社会民主主義)の出生率は高い(図表7)。北欧諸国の社会保障支出は、家族・保育や積極的労働政策など現役世代向けシェアが高く、「全世代型社会保障」となっており、現金給付よりも、現物給付(サービス紐づけ)が多い。今後の対応策としては、(1)安定雇用・スキル向上・男女公平処遇、(2)働き方改革と家事・育児の男女協業化、(3)教育費の公的負担引上げ、(4)子育て時間の負担軽減、(5)将来世代に付け回さず保育・教育コストを賄う社会保障・税制度の再構築が重要である。図表7 主要先進国の社会保障支出の内訳(対GDP比、2017年)03530252015105デンマークフランスドイツイタリア日本韓国スペインスウェーデン英国米国(%)老齢遺族障害保健家族積極的労働政策失業住宅その他図表6 ケアサービスとケア費用の脱家族化〈2000年代から2010年代の変化(日本、韓国、中国)〉⑥ケア用品の家族化ケアサービスの脱家族化ケアサービスの脱家族化ケア用品の脱家族化図表5 日本のケアダイアモンド(3歳児未満の育児)―2000年代前半と比較し2010年代にケア供給(透過色部分)が拡大―⑤⑥MarketStateCommunityFamilyRelatives34 ファイナンス 2021 Jul.SPOT

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る