ファイナンス 2021年7月号 No.668
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が高いレベルで実行できるよう、ADBが資金・知識・技術を組み合わせて後押しする、そして、WHO、UNICEF、GAVI等関連国際機関と協働しながらその内容を高めていく、といった方向性が示された。 予防接種を提供する際、WHOが定めるベスト・プラクティスに即して、現場の医療従事者から始まり、高齢者や基礎疾患のある人々、基礎的医療サービスへのアクセスから疎外されがちな貧困層や脆弱層が優先される計画を作る(政治的・商業的な動機で優先順位が歪められないようにする)。 ワクチンの品質を保つためのコールドチェーン、医療廃棄物を適切に処理できる施設等、各種インフラを整備する。 いつ、誰が、どのメーカーのワクチンを、何回受けたのかを正確なデータとして蓄積し、深刻な副作用等が生じた際に追跡ができる体制を作る。 ワクチンを忌避する世論に留意し、ワクチンのリスクと効用に関する丁寧なコミュニケーションを取る。 国内に主要な製薬会社を持つ途上国については、その製造能力強化のための投資をする。ADBから借りた資金で途上国政府が調達できるワクチンの基準作りは、極めて重要かつ非常に困難な作*10) 出典:World Bank Group Press Release , October 13, 2020, World Bank Approves $12 Billion for COVID-19 Vaccines業であった。粗悪品の流布に手を貸す事態は厳に避けなければならない一方で、あまりに保守的な基準を作れば「お金は用意できたが買えるものがない」という事態を招きかねない。そしてADB自身には、ワクチンの安全性や効果を検証する力はない。保健チームのメンバーは法務室や調達部のスタッフと議論を重ねる一方、10月13日に公表された世銀のワクチン支援の枠組み*10における基準を参照したり、WHO、UNICEF及び米国CDC等の専門家と日夜協議を重ねながら、慎重に検討を進めていった。また、ADBの戦略・政策・パートナーシップ局は、限られた財源が「早い者勝ち」によって費消されてしまうことを防ぎつつ、ADBの財務上の持続可能性を保つことのできる、国別のアクセス上限額の設定について、財務部のエキスパートとひざを突き合わせて検討を深めていった。こうしたプロセスを経て2020年12月11日、その年最後となった理事会に提出され、全会一致で承認されたのが90億ドルの新たなワクチン支援の枠組み―アジア太平洋ワクチンアクセスファシリティ―APVAX(Asia Pacic Vaccine Access Facility)だ。その概要を以下にまとめた。この日の理事会ではAPVAXと合わせてADBの2021年度予算が議論され、承認された。理事会の締Covid19ワクチンの調達、予防接種展開に向けた主要課題24 ファイナンス 2021 Jul.SPOT

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