ファイナンス 2021年7月号 No.668
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全にならない(No one is safe, until everyone is safe)」のだ。こうした問題意識に立って、2020年4月24日にCOVID19の診断、治療、ワクチンに関する新たなツールの開発、生産、そして公平なアクセスを加速させる各国政府、企業、国際機関、慈善団体が協働する枠組み「Access to COVID19 Tools Accelerator」が立ち上がった。各国が資金を拠出しあってCOVID19ワクチンを共同購入し、途上国が公平かつ安価にワクチンを入手できるようにするための国際的な枠組み―「COVAX(COVID19 Vaccines Global Access)」-はその柱の一つだ。GAVI(Global Alliance for Vaccines and Immunization:ワクチンと予防接種のための世界連合*5)が総合調整機能を担うCOVAXは、上のイメージ図が示す通り(1)CEPIによるワクチン開発支援、(2)先進国・上位中所得国政府によるワクチン購入予約と一定の前払金支払い、(3)WHOによる安全性・有効性の審査、(4)UNICEF等による製薬*5) GAVI:開発途上国を対象にワクチンの確保、予防接種の効率性・有効性の向上、予防接種プログラムの改善、ワクチン等の市場形成等を目的に2000年1月のダボス会議で設立が決定された官民パートナーシップ。本部はスイスジュネーブ。職員数約160名。設立当初はUNICEF内に設けられていたが、2009年にスイス政府が独立した国際機関地位を持つスイス財団として認定。先進国・途上国政府、市民社会、ゲイツ財団、先進国・途上国のワクチン業界、世銀、UNICEF、WHO、及び個人資格で参画する有識者で構成される理事会が意思決定を担う。*6) 2021年5月末現在、COVAXは66億ドルの無償資金を動員、AMCに参加する92の中・低所得国に対して13億回分のワクチンを確保している(出典:Gavi)。*7) 2007年2月に成立した世界最初のAMCは、GAVIが肺炎球菌ワクチンを対象としてグラクソ・スミスクライン社とファイザー社との間で事前購入契約を取り交わす一方で、イタリア、イギリス、カナダ、ロシア、ノルウェー、ゲイツ財団が総額15億ドルの財政支援を提供。途上国への安価なワクチン提供に成功した。その後、マラリア・ワクチンが第二のパイロットAMCの対象とされている(出典:ワクチン買取補助金事前保証制度(川合周作、山形辰史))。会社からのワクチン共同調達、そして(5)先進国政府や慈善団体による中・低所得国向けワクチン調達支援資金の提供、を組み合わせることで、2021年末までに世界各国がその所得如何に関わらず人口の少なくとも2割分のワクチンを確保できるようにすることを目指している。途上国にワクチンを供与するために必要な拠出金を2020年末までに20億ドル集める、との目標に対して、枠組み立上げから半年が経過した2020年9月末時点で約7億ドルの寄付が寄せられた*6。なお、先進国等からの拠出金を活用して途上国の支払い負担を軽減するとともに、製薬会社に対しては、事前共同契約により、開発中のワクチンが承認された暁に得られる利益を、より大きく、より確実にすることで、ワクチン開発の誘因を高めるCOVAXの仕組みは、GAVIが10年以上前に作り上げ、実践していた「AMC(Advance Market Commitment:事前買取制度)*7」を活かしたものだ。COVAXを通じたCOVID19ワクチン共同調達・配分の仕組み22 ファイナンス 2021 Jul.SPOT

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