ファイナンス 2021年7月号 No.668
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内部の昇進で誕生する社長が非常に大きな給与をもらうことに抵抗がある場合が多いと思います。社長の報酬が上がることがすべてではありませんが、こうしたことからも変化が生まれていくと思います。―企業のガバナンスについてお話いただきましたが、インデックス運用の拡大による影響が気になるところです。インデックス投資の存在感が増して、パッシブな投資家の保有割合が上昇することで、企業のガバナンス上、問題点が生じないでしょうか。松本 インデックス投資は世界的に盛り上がっていますが、インデックスでは、そこに含まれる企業すべてを買うことになります。他方、アクティブ運用は、いい会社は買う、よくない会社は買わないという判断に基づいて行うもので、よくない会社は淘汰されていきます。このように、株の売り買いという最大の株主のガバナンスが、マーケットのダイナミズムを生み出すのですが、インデックスの時代になると、広い意味でのガバナンスがなくなります。世界最大の資産運用会社トップは、「自社はインデックスファンドであるので、株の売買はできない。株式売買の代わりに企業と対話してエンゲージメントし、駄目な会社を改善するのだ。」と言っていました。資産運用先である数万社の企業に対して、個別にエンゲージメントすることは非常に大変であるので、ESGという考え方が出てきたと理解しています。ESGという形で企業をスクリーニングして、インデックスの時代にも対応していく。単にインデックス投資が増えるだけでは問題が生じると考えています。かつて、ジャパンアズナンバーワンであった昭和の時代は、銀行による「債権者のガバナンス」が強力な時代でした。バブル後にそのモデルが衰退する中で、本来は株主ガバナンスを代わりに強化すべきでしたが進まなかった。それが平成の時代であり、低成長の時代に終わった。今後、アクティビスト・ファンドなどの活動を通じて、少しでもガバナンスが改善し、よりよい企業投資環境になっていくことを願っています。(注) この勉強会は、6月2日に行われました。写真では撮影用にマスクを外していますが、意見交換の際はマスクを着用し、コロナ感染対策の上、実施しております。本シリーズバックナンバー2021年1月号「地域を支えるファイナンスとは?」編多胡秀人氏・森俊彦氏同年3月号「『みなで豊かになる』ためのファイナンスとは?」編中神康議氏・棚橋俊介氏同年5月号「 地域を支えるファイナンスとは?」編野﨑浩成氏・新田信行氏・小野尚氏同年6月号「 事業承継の現場から ~「その時」を支えるファイナンスとは?」編 諏訪貴子氏・小高芳宗氏 ファイナンス 2021 Jul.19財務省再生プロジェクト 部局横断的勉強会(5) SPOT

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