ファイナンス 2021年7月号 No.668
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らないマネージャーがずっと居座っていて、大きな変化が起きにくい状況です。他方、米国企業では、例えば、ベンチャー企業を買収したあと、ベンチャー企業の元トップを関連部門の長にあてるなど、ドラスティックな変化があります。プロスポーツにおいて年功序列で勝てる種目はないように、入社年次でポジションが決まり、あとから追い抜くことがない年功序列で全体の生産性は上がりません。年功序列を廃止すると、ゲームが変わった場合にも、それにふさわしい監督・マネージャーを国内外から招聘することができると思います。もちろん、年功序列制度を変えていくことは難しい面もあります。先ほど申し上げたように、CEOが財務面に関心を持って意思決定に参画するといったようなことからでも、十分に変化は生まれると思います。―部門ごとの部分最適により企業全体の価値が損なわれる「コングロマリット・ディスカウント」に陥っていると指摘する海外投資家もいます。松本 株主が社長を実質的に選ぶ仕組みになっておらず、企業社会内部での選任になっていることが課題です。私は米国マスターカード社の社外取締役も務めていますが、米国の社外取締役の発言力は非常に強く、CEOは社外取締役をボスと呼びます。日本で社外取締役が有効に機能していない理由は、社外取締役ないし取締役会がCEOを選任し、解任もできると思っておらず、CEOが社外取締役をリスペクトしていないからです。例えば、取締役選任議案は株主しか出せないといった制度を導入すれば、企業が株主のほうを向き始めると思います。また、日本のほとんどの経営者は固定給で、株価へのインセンティブが小さく、結果的に、株価に関心が低い経営者が多くなります。日本的な企業慣行では、18 ファイナンス 2021 Jul.SPOT

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