ファイナンス 2021年7月号 No.668
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財務省では、常に国民の視点に立って、高い価値を国民に提供できる組織風土をつくり上げていくため、「財務省再生プロジェクト」を進めています。その一環として、部局横断的な議論の活性化や職員の政策能力向上を図るため、若手の課長補佐を中心とした有志勉強会を開催しており、「コロナ後の様々な政策課題」をテーマとして活動しています。今回は、マネックスグループの創業者・取締役会長の松本大氏を訪ねました。松本会長は、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券にてトレーダーとしてキャリアをスタートされ、ゴールドマン・サックス証券を経て、マネックス証券を創業されました。最近では、昨年、アクティビスト・ファンドをマネックスグループ内に立ち上げられています。様々なメディアでの発信も多い松本会長から、家計の投資行動や日本企業のファイナンス、そしてコーポレート・ガバナンスを中心にお話を伺いました。1松本 大先生 (マネックスグループ 取締役会長)プロフィール1987年4月ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社に入社。1990年4月にゴールドマン・サックス証券会社に転じ、1994年11月に同社のゼネラルパートナーに就任。1999年4月に株式会社マネックスを設立、2004年8月には日興ビーンズ証券株式会社との経営統合により、マネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現 マネックスグループ株式会社)が発足、代表取締役社長CEOとなる。現在は取締役会長、代表執行役社長最高経営責任者(CEO)。―松本会長は、あるインタビューの中で「日本の人たちは、なぜ株式投資をしないのかとよく言われるのですが、株価が下がっていく中で株式投資をした方が良いわけはないのです。その間、預貯金をしていたというのは、合理的な判断だったと思います。」と述べられています。日本の家計の投資リテラシーについてどのようにご覧になっていますか。松本 日本のバブルのピークでは、不動産の売買については、家計部門が「売り越し」である一方、銀行部門は「買い越し」になっていました。この事実だけをもってしても、日本の家計の金融リテラシーが低いとは思えません。不動産への投資の後は、債券や定期預金に投資先が移っていき、バブル崩壊後は、株価や金利が低下していった。家計はその時代に最もパフォーマンスがよい資産にちゃんと投資し、その資産のピーク時に売っていたということです。―企業の時価総額の伸びを見ると、日本企業は他国と比べて劣後しています。日本企業の課題についてどうご覧になっていますか。松本 日本企業のCEOの平均在任期間も3~4年程度で、株価をどう上げるか、資本市場にどう向き合うかといった課題に取り組めていません。また、ファイナンスの知識が十分な人は少ないです。CFOになる人は、CFOがキャリアのゴールとなってCEOになる方は少ない。会社全体を見た経営資源の配分ができるのはCEOだけのはずですが、現状ではCFOが自身の権限の範囲内のみで財務面のマネジメントをしている。全体を見た資本政策としてやれることは沢山あり、対応次第で株価も上がると思います。加えて、日本企業の収益力を下げている要因は人事制度です。日本は産業のゲームチェンジが起きても監督・コーチが変わりません。若手社員は優秀で、生産要素はいいものを持っていますが、新しいゲームを知財務省再生プロジェクト  部局横断的勉強会(5)「日本企業を強化するファイナンスとは?」編前大臣官房地方課総務室長 川本 敦/前国際局為替市場課資金管理室課長補佐 林原 賢悟前関税局関税課課長補佐 神代 康幸 ファイナンス 2021 Jul.17SPOT

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