ファイナンス 2021年7月号 No.668
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IMFによる債務データ突合作業を支持する旨を表明した。(注) 感染症の流行等の影響を受けている低所得国に対して、IMFへの債務返済の支援を行う基金。最後にIMFの資金基盤に関して、IMFはクォータを基礎とする機関であるべきだが、借入資金は、IMFが急速に変化する国際金融状況に対応するための優れた選択肢であり、恒久的なIMFの財源として位置付ける必要があることを指摘した。更に、こうした借入資金の提供を含む加盟国の自発的貢献を、クォータ計算式に組み込むことを強く要請した。4世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)(2021年4月9日)世界銀行・IMF合同開発委員会(注)においては、新型コロナウイルスによる危機が続く中で国際社会が直面している開発上の課題等について議論が行われた。(注) 開発をめぐる諸問題について世界銀行・IMFに勧告及び報告を行うことを目的として1974年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第103回目。麻生大臣からは、新型コロナウイルスの感染拡大が継続する中で、国際社会が連携して一刻も早く危機から脱却するとともに、将来を見据えて、次の危機への備えを強化しつつ、持続可能な社会と成長の土台の構築に取り組み、強靭な復興を目指すことの重要性を強調した。新型コロナウイルスの危機からの脱却に関しては、COVID-19 Vaccines Global Access(COVAX)を含む、Access to COVID-19 Tools Accelerator(ACT-A)の4つの柱である、ワクチン、治療、診断、保健システムの強化にかかる支援をさらに推進することへの期待を述べるとともに、途上国政府が国内でワクチンを普及させる際に必要となる能力の強化やコールドチェーンを含む医療設備・機材の整備等を支援するため、「保健危機への備えと対応に係るマルチドナー資金(HEPRTF)」への追加拠出を表明した。次の危機への備えの強化に関しては、日本がかねてから重視してきたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成がより一層重要になっていることを強調した。UHCの達成に向けては、栄養の側面から取り組むことの重要性を指摘し、12月に東京で開催する栄養サミットに向け、世界銀行グループと連携して途上国支援に貢献していく旨を表明した。更に、気候変動により自然災害へのリスクが高まっている中で、防災の取組みも一層重要である旨を強調した。持続可能な社会の構築の観点からは、気候変動への対応と債務の透明性・持続性の確保が重要であるとの考えを示した。気候変動に関しては、途上国が脱炭素化と経済成長を両立させながら貧困削減に取り組む必要がある中で、民間資金も動員しつつ、各国の実情を踏まえた緩和策と適応策双方への適切な支援を行うことの重要性を強調した。また、債務に関しては、DSSIの最後の延長に係るG20及びパリクラブの合意を歓迎するとともに、「共通枠組」について、DSSIを実施した全ての債権者による透明かつ確実な債務措置の実施と、その他の公的二国間債権者及び民間債権者による、コンパラビリティ原則に基づく措置の確実な実施の重要性を強調した。更に、世界銀行がIMFと共に、債務データ突合を通じて、債務データの透明性・正確性の確保に努めることを慫慂した。成長の土台となるインフラへの投資に関しては、復興段階にある途上国の力強い成長を実現するため、世界銀行に設置されている信託基金の活用を通じて、引き続き支援を進めていく考えを示した。最後に、途上国が危機からの脱却と強靭かつ持続可能な復興を達成する上で、世界銀行グループの役割が極めて重要となる中、麻生大臣からは、日本が昨年10月の開発委員会でその必要性を指摘したIDA第20次増資の前倒しが合意されたことを歓迎しつつ、本年12月までの合意に向けて国際社会が連携して取り組むことの重要性を強調した。併せて、国際復興開発銀行(IBRD)及び国際金融公社(IFC)についても、危機対応と強靭な復興に向けた支援が求められている中で、日本として、両機関の増資に係る払込みを前倒しし、危機下において、両機関が全力で途上国支援に取り組めるよう、引き続きサポートしていく旨を表明した。DCコミュニケにおいては、全ての国に対する安全かつ効果的なワクチンの配布や、UHCを備えた強固な保険システムの重要性を強調するとともに、日本が指摘した諸点を含む、グリーンで強靭かつ包摂的な開発と、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた支援を促進することとされた。また、IDA第20次増資の1年前倒しを歓迎し、本年12月までに合意されるIDA増資が、強固な政策枠組みの下、IDAの支援対象国のグリーンで強靭かつ包摂的な回復を支えることへの期待が表明された。16 ファイナンス 2021 Jul.IMF・世界銀行春会合およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要SPOT

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