ファイナンス 2021年7月号 No.668
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デミックに対応していくためのG20行動計画について、昨年10月に続いて2度目の更新がなされ、承認された。声明では、まず世界経済について、見通しは改善しているが、回復は各国間・各国内でばらつきがあり、新たな変異株の拡大やワクチン接種のペースの違いなど、大きな下方リスクにさらされていることを確認した。その上で、女性、若者、非正規労働者など、最も影響を受けた人々の経済的な傷跡の問題を含め、拡大する格差に対応することを表明した。更に、必要とされる間は、全ての利用可能な政策手段を用いるとの決意を再確認した。また、為替について、為替レートは経済のファンダメンタルズを反映するという従来の考え方を明確化した。貿易については、開かれた公正な、ルールに基づく貿易の重要な役割を認識し、保護主義と闘うとのコミットメントを想起した。低所得国支援については、IMFの特別引出権(SDR)(注)の新規一般配分、債務問題、国際開発協会(IDA)の増資、の3つを含む包括的な具体策を示している。(注) 国際的な流動性を創出するため、IMFが創出し、加盟国に配分する合成通貨。配分されたSDRは、SDR金利を支払うことで米ドル等の自由利用可能通貨に交換可能。第一に、SDRについては、G20として6,500億ドルの新規一般配分に合意した。その上でIMFに対して、SDRの使用に係る透明性・説明責任の強化策、先進国のSDRの活用策を策定するよう要請した。透明性・説明責任の強化は、G7やG20等での日本の主張を反映したものである。第二に、債務問題に関しては、2020年4月に合意した債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)について、2021年12月末まで最後の延長を行うことに合意した。また、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」(「共通枠組」)に基づく債務措置の実施にあたって、債権者委員会の来る初回会合への期待を示すとともに、参加する全ての公的二国間債権者は、開かれた透明性ある形で交渉すべきことを確認した。加えて、民間債権者等が、「共通枠組」に参加する公的二国間債権者と少なくとも同程度の条件で債務措置を実施することの重要性を強調している。更に、債務データの質・整合性の強化、開示の改善に向けて、IMF・世界銀行の提案の進捗に期待する旨を表明した。第三に、IDAについて、第20次増資を1年前倒しし、2021年12月までの合意を目指すことを歓迎した。第20次増資の前倒しは、今後IDAの資金不足が見込まれる中で、日本がその必要性を強調してきたものである。国際課税については、2021年半ばまでに、グローバルなコンセンサスに基づく解決策に合意することに引き続きコミットしていることを確認した。最後に気候変動について、サステナブル・ファイナンスの動員の重要性を認識するとともに、サステナブル・ファイナンス・スタディ・グループを作業部会に格上げすることに合意した。3国際通貨金融委員会(IMFC) (2021年4月8日)国際通貨金融委員会(注)においては、世界経済の動向や、経済回復を後押しするためのIMFの取組等について議論が行われた。特に世界経済については、コミュニケにおいて、金融の脆弱性の高まりは、世界の金融環境が急速に悪化した場合、リスクをもたらす可能性があるとの認識が示されるとともに、今般の危機が長引く傷跡をもたらし、貧困及び不平等を悪化させる可能性があるとの懸念が示された。(注) 国際通貨・金融システムに関する問題についてIMFに助言および報告することを目的として1999年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第43回目。麻生大臣からは、ワクチンの接種開始により世界経済の見通しは改善しているものの、依然高い不確実性が存在していること、日本では感染症が比較的抑制されており、経済も本年中にはコロナ前への水準に回復する見込みである旨を述べた。IMFの低所得国支援については、まずSDRについて、新規配分を支持しつつ、SDRの使用における透明性、説明責任向上のための手当が行われることを歓迎した。また、譲許的資金について、利用限度額(アクセスリミット)の引上げや例外アクセスの上限撤廃など、低所得国向け融資制度の改革案を支持するとともに、大災害抑制・救済基金(注)について、実施済みの1億ドルの貢献に加えて、更なる資金貢献を前向きに検討する用意がある旨を表明した。債務問題に関しては、DSSIの延長を歓迎するとともに、DSSIを実施した全ての債権者が、「共通枠組」に基づく債務措置を透明かつ確実に実施することの重要性を指摘した。更に、債務措置に至る前の平時から債務の透明性と正確性を確保するため、世界銀行・ ファイナンス 2021 Jul.15IMF・世界銀行春会合およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要SPOT

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