ファイナンス 2021年7月号 No.668
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この覚書は、当初は不正薬物の密輸防止のための不審情報提供の協力強化を目的として締結されましたが、その後1995年には、密輸防止の対象に銃器を追加し、そして2019年にはG20大阪サミット以降、東京オリンピック・パラリンピックまでの一連の重要行事の日本開催を見据えて、覚書の対象にテロ防止等の観点を追加し、内容の拡充を図りました。また、締結団体についても、当初覚書を締結したのは、貿易関係の4団体でしたが、情勢の変化に合わせて順次拡大してまいりました。近年では、宿泊施設が貨物の送付先として悪用される事案や、クルーズ船旅客への対応を念頭に、宿泊業界やクルーズ船業界等とも新たに締結し、現在合計11団体(2021年6月現在)と同覚書を締結しています*6。これまで、覚書締結先である業界団体から多くの情報を提供して頂き、その情報も活用しながら、相当量の不正薬物等を摘発しています。更に覚書の対象にテロ防止等の観点を追加して以降は、爆発物等、テロ関連物資の疑いのある貨物についても通報・情報共有を頂いており、テロの未然防止に効果を発揮してきているところです。今般のオリンピック・パラリンピック開催時に際しても、官民の連携も含めた水際でのテロ対策は非常に重要であると考えています。5おわりに税関においては、このように情報や機器を活用しながら、内外関係機関との連携を行いつつ、日頃より水際でのテロ対策を行っておりますが、国際的な注目を集めるイベントが日本国内で開催される際には、特にこういった対策につき、警戒レベルを引き上げて、厳*6) 財務省関税局が覚書を締結している団体は、航空貨物運送協会、日本通関業連合会、日本船主協会、定期航空協会、外国船舶協会、大日本水産会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、全日本シティホテル連盟(現:全日本ホテル連盟)、日本旅館協会、日本外航客船協会、全国漁業協同組合連合会の計11団体。格な検査を行うこととしております。5月28日には、東京オリンピック・パラリンピック開催前最後の全国税関長会議が、麻生財務大臣出席のもとで開かれました。会議において麻生大臣は、世界では厳然としてテロが起こっており、日本で起きないという保証はないということを念頭に、改めて東京オリンピック・パラリンピックに向けた税関のテロ対策に万全を期すことを各税関長に指示しました。本誌が発行されるときには、税関においては、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、最大限の警戒レベルで水際対策に取り組んでいるところになります。ここまで読んでいただいた読者の皆様方におかれては、今回のオリンピック・パラリンピックの開催の裏側では、国民生活の安全・安心を脅かすテロを絶対に国内で起こさせないという強い使命感のもと、全国で税関職員が総力をあげて、水際でのテロ対策に全力で取り組んでいるということに、ぜひ思いを馳せて頂ければと思います。(写真) 2020年の「密輸防止に関する覚書(MOU)」締結式の様子(写真)税関長会議において訓示をされる麻生財務大臣 ファイナンス 2021 Jul.13税関におけるオリパラに向けたテロ対策 SPOT

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