ファイナンス 2021年7月号 No.668
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野等に投資を行う「DBJイノベーション・ライフサイエンスファンド」を設立した。DBJはファンドを通じて国内のベンチャー企業に投資する枠組みをつくり、そこに国が産投(産業投資)出資を行う。また、海外とくに米国のベンチャー企業にも投資を行うことで、そのノウハウを日本の企業に還元することも考えている。これにより日本の製薬ベンチャーに成功事例をつくる環境を提供する。DBJはこれまでも医療系のベンチャーファンドに出資した実績や日本の製薬会社が海外の医療系ベンチャー企業を買収する際に融資をするなどの実績がある。国からDBJへの出資はこれまで全体で1,000億円程度だったが、令和3年度においてはほぼ倍増の1,750億円の予算をつけている。ファンドを設立したのは令和3年3月だが、すでに1号案件がスタートしている。医療系ファンドに関してはDBJも一定の実績があるが、より専門性が高い分野に取り組むため、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)とも連携していくこととしており、1号案件はAMEDの紹介を契機として実現に至ったものである。金融機関の収益構造の転換と 地域の活性化を両立一方地域支援については金融庁の動きと連動して進められている。令和2年7月17日の「成長戦略フォローアップ」では、低金利環境の長期化やベンチャー支援の必要の高まりといった状況の変化を踏まえ、銀行規制の在り方を検討し、令和2年度中に結論を得ることとされていた。これを受けて、金融庁が規制の緩和に動いている。これまでは銀行が企業に出資する場合の制約が厳しかったが、それを緩和することにより銀行が地域企業に出資しやすくする。これにより、銀行の収益が確保できると同時に地域の活性化にもつながることから、一挙両得の効果が期待できる(なお、銀行の出資規制の緩和を含む法律案が令和3年3月に国会に提出され、5月に成立している)。一方、DBJでは以前から横浜銀行や静岡銀行などの地銀と共同でファンドを設立し地域の企業を支援する活動を行っている。たとえば、最近の中小企業では後継ぎ問題が深刻になっているが、成長性はあるが資金不足に陥っている企業への投資などを行っていた。金融庁による法改正に伴いこのような地域企業への出資が今後加速していくことが予想される中で、財政投融資を活用して相乗効果が出せる施策の検討が行われた。具体的には、地銀等の民間金融機関がファンドを設立し地域企業等向けに事業改革等のための投資を行っているところ、民間金融機関による取組みを後押し・育成するために国からDBJに産投出資を行いDBJがファンドに出資することとしている。地域企業の回復・成長のための民間金融機関・ファンド支援の仕組み国地域企業等(特定投資業務)民間金融機関(地銀等)投資子会社等民間ファンド・サーチファンド・事業承継ファンド 等出資銀行の出資規制の緩和等出資・子ファンド設立等事業改革等のための投資を拡大産投出資DBJ ファイナンス 2021 Jul.7ポストコロナに向けて財政投融資が果たす役割~令和3年度財政投融資計画から~特集

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