ファイナンス 2021年7月号 No.668
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海外ベンチャーのノウハウを 日本の医療産業に還流ワクチン開発をはじめ、日本の医療産業の停滞が指摘されているがその要因は主に3つ考えられる。一つ目は最近の新薬の開発トレンドの変化。新薬市場は、従来の「低分子医薬品」からバイオテクノロジー技術を活用した「バイオ医薬品」にシフトしている。しかし、日本では十分に追いついていない面がある。二つ目は研究開発費の規模。バイオ医薬品へのシフトに伴い研究開発コストは増加しているが、日本の製薬メーカーの研究開発費は米国には遠く及ばない水準が続いている。三つ目は開発主体。特にバイオ医薬品の場合、製薬会社の研究所よりもバイオベンチャーが主体となっていることが多い。上場後のバイオベンチャーの時価総額を比較すると、米国が圧倒的に強く、日本は数十分の1に過ぎない。このような状況の中で日本の新薬の開発を強化するためには、日本の創薬メーカーの投資規模拡大やベンチャー企業の育成が必要になっている。あるいは、新薬開発に強みを持っている米国のバイオ・創薬ベンチャーへ投資し、その知見を日本に還流して活用する必要もある。これは日本政策投資銀行のレポートでも指摘されている。それによると、日本のベンチャーが育たない理由には「負のスパイラル」があるという。具体的には、日本では成功事例が出ていないため、投資家が投資しにくい状況がある。投資が行われないと成功確率が下がるため、優秀な人材も集まらず案件も出てこない。結果、成功事例が出にくいという負のスパイラルに陥っているというわけだ。このような状況から成功事例をつくることが重要であると考えられるが、この部分で財政投融資を活用していく検討が行われている。例えば、国の予算を使って有望な企業に投資すれば、他の投資家の資金を呼び込むきっかけにもなりえる。令和3年設立のファンドで すでに第1号案件が始動具体的には、DBJ(日本政策投資銀行)が医療分医療系ファンドの仕組み国国内外のベンチャー企業●国内外の有望なベンチャー企業及びベンチャーファンドへの(共同)投資等DBJ(特定投資業務)DBJイノベーション・ライフサイエンスファンド日本の医薬メーカー等のライフサイエンス企業※●研究開発投資、事業拡大投資投資投資最先端技術へのアクセス、最高水準の人材獲得、投資先情報の提供 等※医薬、医療機器、バイオ・創薬分野への投資を行う本邦企業を支援AMED等産投出資連携令和3年度の具体的な取組み経済構造の転換を目指し 「医療産業」と「地域企業」を支援6 ファイナンス 2021 Jul.

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