ファイナンス 2021年6月号 No.667
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1はじめにみやま市は、福岡県の南部、有明海に注ぐ矢部川下流域左岸に位置し、東部の山間部と筑後平野の田園地帯が広がる人口約3万6千人の市です。基幹産業は農業で、米・麦の二毛作を中心に、博多なす、山川みかんなど野菜や果樹の栽培も盛んで、有明海沿岸では海苔養殖など漁業も行われています。市政運営では、第2次みやま市環境基本計画(2021年3月)において、目指す環境像を「未来へつながる持続可能なまちづくり~資源循環一人ひとりの心がけ~」と位置づけ、市民や事業者と共に環境施策に取り組み、脱炭素社会を構築することを大きな柱としています。2バイオマスセンター「ルフラン」東日本大震災における原子力発電所の事故を契機に、地域分散型の再生可能エネルギー導入の機運が高まる中、市は電力自由化に伴い、市内で発電して売る「電力の地産地消」のしくみを作り、自治体で初めてとなる市民家庭向けの電力小売を行う「みやまスマートエネルギー株式会社」を2015年に設立しました。一方、「再生可能エネルギー導入調査」や「生ごみ・し尿汚泥系メタン発酵発電設備導入可能性調査」を行い、生ごみ資源化を進める「バイオマス産業都市構想」を2014年に策定しました。折しも、し尿処置施設とごみ焼却施設の更新期を迎えつつある時期でした。2018年12月に、生ごみを発酵させることで資源に変えるバイオマスセンター「ルフラン」が完成、「ルフラン」は仏語で「詩や音楽など同じ句で曲折を繰り返す」という意味があり、資源循環のまちづくりへの想いを込めているそうです。本施設では、生ごみをし尿や浄化槽汚泥と共にメタン発酵設備で分解発酵処理し、メタンガス(バイオガス)を発生させます。発生させたバイオガスを利用して電気と温水の供給をする一方で、発酵後の液体を液肥として利用します。電気は本施設の電力の約4割を賄い、温水は桶洗浄などに使用、液肥は有機質の肥料として水稲や麦の栽培に利用します。各家庭では、市から配布されている生ごみ分別バケツに可燃ごみと分別して生ごみを溜め、生ごみ回収桶(10世帯に1個)に出すという、簡単な仕組みです。資源循環のまちづくり福岡財務支局理財部融資課村本 由紀美みやま市バイオマスセンター「ルフラン」バイオマスセンター施設規模計画処理量:130t/日(最大処理量基準)家庭系生ごみ:5.3t/日(1,600t/年)事業系生ごみ:2.3t/日(700t/年)産業食品廃棄物:2.3t/日(700t/年)し尿:42t/日(14,000t/年)浄化槽汚泥:78t/日(26,000t/年)液肥の生産量:最大能力20,000t/年資源化処理方式メタン発酵:湿式・中温方式発生バイオガス精製後ガスエンジンによる発電発生消化液:液肥として農業利用86 ファイナンス 2021 Jun.連載各地の話題

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