ファイナンス 2021年6月号 No.667
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技術水準の高さは、通貨としての信用・信頼の維持、安定した発行・流通、ひいては国際通貨としての「円」の信用・信頼に寄与し、我が国経済の発展と国際的な競争力強化の基盤の一つとなってきたと考えられる。なお、本年11月の発行開始に向けて現在準備を進めている新500円貨幣については、バイカラー・クラッド、異形斜めギザを、2024年度上期の発行開始を目指している新銀行券(一万円券・五千円券・千円券)については、高精細すき入れ、3Dホログラムといった世界最高水準の偽造防止技術を採用している。近代通貨制度150周年記念貨幣一万円金貨(本年6月に近代通貨制度が150周年を迎えることを記念し、9月(一万円金貨)及び11月(五千円金貨、千円銀貨)に発行予定。)新500円貨幣(二色三層構造であるバイカラー・クラッド技術を我が国の通常貨幣では初めて導入。また、斜めギザの一部を他のギザとは異なる形状にした「異形斜めギザ」を通常貨幣としては世界で初めて採用。)新一万円券(現行の「すき入れ」に加えて、新たに高精細なすき入れ模様を導入。また、肖像の3D画像が回転する最先端のホログラムを世界で初めて銀行券に導入。)(3)キャッシュレス時代の到来現代のイノベーションは、貨幣や銀行券の品質、偽造防止技術の向上のみならず、これら現金以外の決済手段の多様化、キャッシュレス化をもたらした。我が国では、1961年に日本初のクレジットカードが登場して以降、国民の間で利用が広がったのに加え、2000年代に入ると、JR東日本のSuicaに代表される電子マネーが登場し、数多くのサービスが提供・利用されるようになった。また、近年では、○○ペイといったQRコード決済をはじめとしたスマートフォン決済も広がりを見せているほか、GAFAをはじめとしたIT企業がそれぞれのプラットフォームビジネスと一体的に決済サービスを展開するなど、決済手段が急速にデジタル化している。Suica※(提供:東日本旅客鉄道株式会社)※「Suica」は、東日本旅客鉄道の登録商標。QRコード決済のイメージ(出典:統一QR「JPQR※」普及事業サイト)※総務省・経済産業省が推進する統一規格であり、ひとつのQRコードで多くの決済サービスに対応できるキャッシュレス手段。さらに、昨年来の新型コロナウイルス感染症の拡大は、テレワーク勤務の広がり、宅配・動画配信サービスの利用拡大など、非接触型のビジネス、生活スタイルへの転換を促進し、社会・経済のデジタル化の動きを加速させているが、こうしたデジタル化のトレンドはコロナ後も中長期的に続く可能性が見込まれる。こうした社会・経済のデジタル化の流れの中で、長らく金属や紙で製造されてきた通貨のデジタル化の取り組みとして、近年、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が注目されるようになっている。 ファイナンス 2021 Jun.5新しい通貨 CBDC特集

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