ファイナンス 2021年6月号 No.667
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田辺市以下の3点に大きな特徴があります。(1)「産学官金」が一体となった支援体制大学や商工関係団体等に加え、ビジネスにつなげるためには、金融機関の支援が重要です。そこで、紀陽銀行、きのくに信用金庫、日本政策金融公庫、さらに金融機関を監督する近畿財務局和歌山財務事務所などに協力を要請し、「産学官金」が一体となった支援体制を構築しました。特に、日本政策金融公庫とは、「経営者育成に係る連携協力に関する協定書」を締結し、カリキュラム作成や塾生選抜など塾の運営に多大なご協力をいただいています。(2)自ら考え行動できる人材の確保半年間、全14回の講義、ビジネスプランの発表といった面倒なカリキュラムに自ら手を挙げる地方の若手事業者は少ないというのが実情です。そのため、公募と並行し、20~40歳代の意欲的な若手経営者の中から、誰と誰がつながるとどんなビジネスができるのかバリューチェーンを意識しながら、農家やシェフ、工務店、グラフィックデザイナー、家具屋など異業種の人材をリストアップし、一人一人口説いていきました。(3) CSVを段階的に理解し、行動に移すことのできる実践的カリキュラムまずは、地域課題の根っこである「人口減少」を理解したうえで、将来、地域がどうなるのかを具体的にイメージしつつ、次の段階として高齢化や子育て、観光などの地域課題をディスカッションしながら深く掘り下げることで、自社が解決できる地域課題を探し出すプログラムとしています。4たなべ未来創造塾から生まれた事例「空き家」「中心市街地空洞化」といった地域課題を解決するため、築80年の空き家をリノベーションしたゲストハウス&シェアハウス&カフェバー“the CUE”。「鳥獣害」の解決に向け、獲る×捌く×食べるを一体的に取り組む“(株)日向屋”。管理が行き届かなくなる山が広がることで増加している「虫食い材」を活用した木材ブランディング“BokuMoku”。安く取引されてしまう規格外の梅と価格高騰により気軽に食べられなくなった鰻、両方の地域課題を解決するため、老舗鰻屋が梅農家とコラボした“梅と鰻のひつまぶし”。他にも修了生同士が新たに商品開発を行うなど、つながりあいながら数多くのスモールビジネスが生まれ、1~4期47名の修了生のうち33名、実に70.2%が新たな一歩を踏み出しています。84 ファイナンス 2021 Jun.連載各地の話題

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