ファイナンス 2021年6月号 No.667
87/94

各地の話題1田辺市の概要田辺市は、和歌山県の中央部に位置し、県下第二の都市、交通や商業の要衝として栄えてきました。地域資源では、世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」、世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」をはじめ、新鮮な魚介類、温泉資源などにも恵まれる自然と歴史が豊かなまちです。しかし、2015年では74,770人であった人口が、2060年には36,193人と50%以上減少(田辺市人口ビジョン)、全国平均を大きく上回るスピードで人口減少が進むことが予測されています。2田辺市の戦略とは世界遺産登録10周年、翌年には合併10周年という大きな節目を迎え、今こそ未来のために持続可能なまちづくりを目指そうという市長の強い思いから、2014年、市役所内に「たなべ営業室」が創設されました。新たな戦略を立てるため、地域づくり・地域経済の専門家を探していた中で、富山県内で数々の実績をあげていた富山大学地域連携戦略室長金岡省吾教授(現熊本大学熊本創生推進機構教授)の存在を知り、協力を要請し、金岡教授からまずは地域づくりの変遷、全国の先進事例、マーケティングなど幅広い知識を習得することとなりました。国では、人口減少社会を迎え、全国総合開発計画から国土形成計画や地方創生へと大きく施策を転換させています。その中でも、特に重要なのは、地域課題をビジネスで解決するCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)という考え方です。これまで地域活性化という名目のもと、各地で様々なイベントが行われてきましたが、イベントそのものが目的化してしまい、結果として、疲弊していく地域も見られています。これからの人口減少社会に求められる持続可能なまちづくりとは、地域課題を解決しながら、企業利益に結び付けることで、地域と企業がwin-winの関係性を構築することができ、その結果、地域経済が循環し、最終的には人口減少の歯止めにつなげていくことだと理解しています。そのため、CSVを実践する地域企業を地道に育成していくことが、持続可能なまちづくりへの一番の近道であると考え、人材育成を柱とした戦略を立てることとなりました。3地域を救う!たなべ未来創造塾こうした戦略を具体的に実践するため、人材育成のノウハウを有する富山大学地域連携推進機構と田辺市との間で「人材育成の連携に関する覚書」を交わし、共同研究員として市役所から職員1名を派遣し、平成28年に「たなべ未来創造塾」を立ち上げることとなりました。たなべ未来創造塾~ ローカルイノベーターが 地域を救う~田辺市たなべ営業室 係長鍋屋 安則田辺市 ファイナンス 2021 Jun.83連載各地の話題

元のページ  ../index.html#87

このブックを見る