ファイナンス 2021年6月号 No.667
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各地の話題新たな人の流れの創出を目指した妙高市の取組妙高市企画政策課 主査柳内 陽子コロナ禍により、多くの方が、移動の制限や在宅勤務などを経験する中、リモートワークは働き方に大きな変化をもたらしました。一部では、土地代が安価な地方へ事務所移転を進めている企業も多くなっているといわれ、この流れは、地方行政を担う私たちにとって、地方への「新たな人の流れ」を創出する大きなチャンスと言えます。そこで、地方への都市資源の誘引などを図るため、妙高市が取り組んでいる、新たな人の流れを創出するための施策や考え方の一端について、ご紹介します。1はじめに妙高市の概要妙高市は、新潟県の南西部に位置する、人口3万1千人余りの地方都市です。2015年の北陸新幹線(金沢延伸)開業によって、東京から2時間程度で移動できるようになりました。日本でも有数の豪雪地帯であり、ディープスノーを求めて国内客に留まらず、オーストラリアなどからスキーなどを楽しむ訪日観光客が多く訪れています。新幹線の開業によって、インバウンドを含めた新たな観光需要が喚起され、外資企業による複数のリゾートホテルの開業など、開発投資による一定の効果が見られました。今後は、コロナ禍による社会経済変化を捉えるとともに、新幹線の延伸効果をさらに発揮し、首都圏などからの都市資源の一層の獲得を図るため、観光分野以外での新たな都市需要の掘り起こしや、時間・場所を超える可能性を秘めているリモートワーク等の活用、市内の構造的な地域課題解決への寄与などの視点から、新たな人の流れをつくる取組(施策)を進めていくこととしました。2「新たな人の流れ」をつくる取組当市では、首都圏などからの新たな人の流れの創出や都市資源の誘引・獲得を図り地域活性化を目指す新たな施策として、「しごと+休暇」の要素を取り入れた「ワーケーション」事業、ワーケーションをきっかけに当市を訪れる首都圏等企業・人材と市内企業との「ビジネスマッチング」事業、企業とのつながりの中でアウトソーシング業務を受注し、市内の雇用創出につながる「ワークシェアリング」事業を展開させることとし、受け皿として「テレワーク研修交流施設」の整備を合わせて計画しました。これらの事業を含め、2020年~2024年にわたる事業推進の財源として、地方創生推進交付金の採択をいただき、2020年度から各種施策をスタートしました。また、2021年度は地方創生テレワーク交付金を活用し、サテライトオフィス等開設運営支援補助制度を設けました。民間によるサテライトオフィス、コワーキングスペース等の開設・運営を支援することで、官民連携の一体的な推進により、企業立地の促進、産業の活性化及び雇用機会の拡大を図ることとし、首都圏などからの新たな人の流れをつくる取組を加速させています。妙高市 ファイナンス 2021 Jun.81連載各地の話題

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