ファイナンス 2021年6月号 No.667
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1 書籍玉井雪雄『かもめチャンス』(小学館)マンガが敷居が低かろう、ということでまずはマンガから。だいたい10年前(2008~2013年連載)の作品です。2021年5月現在で、自転車マンガ史上トップクラスの人気を誇る『弱虫ペダル』が連載中であるにもかかわらず、そんな昔のマンガを取り上げるのは、わたくしが天邪鬼だから、というだけではありません。あえてこちらをおススメする理由は、本稿の読者層ならば主人公に感情移入しやすいだろう、という点。高校が舞台の『弱虫ペダル』とは異なり社会人が主人公なので、子育てや部下の扱いで悩むところなどにリアリティを感じてしまいますし、レースを通じたカタルシスもまた大きくなっています。なお、そんなところに共感しても楽しくない、マンガを読むならエンタメに興じたいということでしたら、『弱虫ペダル』を。疋田智・小林成基 『新・自転車〝道交法〟BOOK』(枻出版社)世の中に自転車本あまたあれど、普段使いの乗り方を丁寧に解説した本となると、わたくしはこれに勝るものを知りません(といいながらわたくしが持っているのは、本書の実質的な旧版である同じ著者陣の『自転車はここを走る!』なのですが)。財務省の近くでいえば、溜池から六本木に向かう際、六本木二丁目交差点(アークヒルズ先のY字路)を自然体で行くとY字路を左に入って遠回りの飯倉片町経由になっちゃいますけどどうしましょう? という話が取り上げられているあたりで、本書の狙いがよくわかるでしょう。2点ご注意いただきたく、1つは枻出版社は現在民事再生手続中なこと。ムックなので再版はかからず、上記のわたくしの持っているもの、『自転車“道交法”BOOK』、本書とリニューアルして出版されてきましたが、同様に続くかは不明です。現在はまだ在庫があるようですが、今後、入手が困難になるかもしれません。もう1つは、著者のひとり疋田氏は「ツーキニスト」として知られる業界の有名人ですが、長年自転車通勤の普及に努める過程で日本の道路交通行政、ひいては行政・公務員一般に総じて批判的なスタンスをとるようになり、霞が関関係者にとっては攻撃的に見える表現が散見されます。本書の有用性を損なうものではないので、なるべくスルーいたしましょう。ふじいのりあき 『ロードバイクの科学』(スキージャーナル)自転車は多くの人が使っているだけに、いろいろな人が語っています。本連載もそうですが(笑)、これらは玉石混淆で、その中から玉を高確率で選ぶには、急がば回れ、基本的な知識の枠組みを身につけることが早道です。そのためにおススメなのが本書。タイトルに「ロードバイク」とありますが、自転車一般に通じる話がほとんどですのでご安心あれ。著者はホンダのエンジニアですが、日々片道20kmを自転車で通勤する等プライベートでたしなむ自転車を、職業人のスキルで解き明かした一冊です。書名で検索してみれば、本書を指針としている自転車乗りの多さが一目瞭然で、本連載に関しても、例えば本編第4回で紹介したペダルの1分当たり回転数の目安―一般に90回転とされるけれど、しんどければ70回転ぐらいでもいい―については、著者が実験データ付きで検証している本書が元ネタだったりします。残念ながらこちらも版元が倒産していて、何度も重版がかかったおかげかまだ在庫僅少という話は聞きませんが、再版は期待できない点にご留意ください。―完結したはずなのに編集のご厚意でまだまだ続くよ! 本編の「楽」の先に、「楽しさ」を探してみよう!!?自転車通勤「なろう」になろう!?で証券取引等監視委員会事務局総務課長若原 幸雄本連載はシン・最終回だけど、自転車には終わりはないわけで、 この先を導くリソース紹介で締めくくります。俺の屍を越えてゆけ!番外4らくあぷらいど!!50 ファイナンス 2021 Jun.連載自転車通勤で 「なろう」になろう!?

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