ファイナンス 2021年6月号 No.667
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2小高 芳宗先生 (ホテル三日月グループ代表取締役)プロフィール2015年現職に就任。18年7月ベトナム国ダナン市スアンティエウ観光投資株式会社(現ダナン三日月所有運営会社)代表就任。―本日はお時間を頂戴しありがとうございます。御社が運営する「勝浦スパホテル三日月」は、昨年2月、中国・武漢市から退避した邦人の一時受入れ先となったことで、全国的に報道されました。その後の感染の爆発的拡大、緊急事態宣言の際には、全館休館されたとお聞きしています。まずは、コロナ危機の影響、金融機関の対応や、Gotoトラベルについて伺えればと思います。小高 2020年1月29日に中国・武漢市からの帰国者を受け入れましたが、帰国者受入れに伴う風評被害も大きく、当社のホテルのみならず、近隣の市町村には「勝浦市民お断り」の札を出すお店があったり、帰国者が勝浦のスナックで飲み歩きをしているという根拠のない噂が流れ、未知のウイルスへの不安を原因とする差別がありました。約2週間で当グループ千葉3館において27,000人以上、6月までで累計キャンセル人数は68,000名に及びました。平時のホテル部門の売り上げが110億円から120億円である中、前年比マイナス75億円となっています。そうしたなかで、累次の資金調達を行ってきました。7月20日までに34.5億を一般融資で、11月に21.6億円を商工中金の資本性劣後ローンで、それぞれ調達しました。商工中金は、土日も窓口を開けて対応したということで、企業のエッセンシャルワーカーと言えると思います。同時に日本政策金融公庫と民間金融機関の協力で、制度融資を広くスピーディーに対応する姿は官民一体となっての企業支援体制を感じ、経営に希望が持てる協業でした。Gotoトラベルキャンペーンについては、額面上の割引という金銭的なインセンティブに留まらず、旅行のGoサインと捉える人も多く、物心両面にて効果は絶大でした。一方でキャンペーンが停止になると世の中が旅行してはいけない雰囲気になったのも事実です。観光は元の形に戻らないにせよ、アフターコロナは必ず来ると考えており、それに向けて今準備しているところです。―一部の金融機関について、顧客との関係が希薄化しているとの指摘があります。お取引のある金融機関との間で、日常的なやりとりはあるのでしょうか。金融機関は御社の事業内容を理解していると思われるでしょうか。小高 メインバンクの商工中金とは昭和44年より取引させて頂いております。長きにわたる関係維持のためには、常に当社の経営状態に対し「支援したくなる企業」であり続けるよう、担当変われば国が変わると仮定し、プロポーザルの繰り返しが必須だと感じます。お互い代変わりも担当変更もあるのですから、「長年付き合っているから大丈夫。」と思わないのが礼儀です。当社は、人口減少による国内の市場縮小を見据え、経済成長が目覚ましいベトナムに、294室、開発面積13ヘクタールの大型リゾートコンプレックスを開業しています。商工中金には、2019年に、このベトナムへの投資のサポートをしていただいて以降は毎月バンクミーティングのお時間を頂戴しており、丁寧なコンディション確認を実施していただいています。また、メガバンク・地元金融機関を含む他の金融機関とも緊密にコミュニケーションを取らせていただいており、このような密なやり取りを通じて事業内容については金融機関皆様に理解されていると感じています。こうした日頃の積み重ねが有事の際の融資、今回で言えば3月7日の27.5億円のシンジケートローン組成の内示やその後の資本性劣後ローンの上限額までの融資にも繋がったと実感しています。―話が前後しますが、御社におかれては、2015年に先代の創業者から事業承継をされています。金融機関の提供するサービスの中で事業の助けになるものはあるでしょうか。事業承継にあたって困難だった点はどのようなところでしょうか。特に、事業承継の際に会社の債務に対する個人保証を引き継がないといけないという話がありますが、御社の場合、いかがでしたでしょうか。36 ファイナンス 2021 Jun.SPOT

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