ファイナンス 2021年6月号 No.667
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財務省では、常に国民の視点に立って、高い価値を国民に提供できる組織風土をつくり上げていくため、「財務省再生プロジェクト」を進めています。その一環として、部局横断的な議論の活性化や職員の政策能力向上を図るため、若手の課長補佐を中心とした有志勉強会を開催しており、「コロナ後の様々な政策課題」をテーマとして活動しています。日本の高齢化は、国民全体の高齢化だけではありません。「社長の高齢化」も右肩上がりで進んでいます。全国の94万社を対象とした帝国データバンクの「全国社長年齢分析」によると、社長の平均年齢は調査を開始した1990年(54.0歳)から2020年(60.1歳)まで31年連続で上昇しています。2020年の社長の年齢を年代別で見ると、60代が27.3%、70代が8.9%、80歳以上が4.4%と、社長の年齢が60歳を超える企業は4割を超えます。年齢に関係なく第一線で活躍する経営者が多いこと、それ自体は悪いことではありません。しかし、企業がある日突然廃業することになると、その影響は、その企業の従業員や家族の生活はもちろんのこと、取引先の企業、ひいては地域経済に様々な影響が及びます。今回のテーマは事業承継です。製造業・宿泊業それぞれの分野で事業承継を経験した2名の企業経営者にご登場いただき、事業承継の現実、金融機関との関わり、そして、最近のコロナ禍を踏まえた経営上の対応について、お話を伺いました。1諏訪 貴子先生 (ダイヤ精機代表取締役社長)プロフィール大学卒業後、ユニシアジェックス(現・日立オートモティブシステムズ)でエンジニアとして勤務。27歳から32歳にかけて2度にわたり、ダイヤ精機入社・リストラ退社を経験。32歳(2004年)で父の逝去に伴いダイヤ精機社長に就任。新しい社風を構築し、育児と経営を両立させる若手女性経営者として活躍中。日経BP社ウーマン・オブ・ザ・イヤー 2013大賞(リーダー部門)受賞。ダイヤ精機代表取締役社長のほか、日本郵便社外取締役、中小企業省中小企業政策審議会委員、政府税制調査会特別委員。―本日は東京・大田区のダイヤ精機本社工場3階の社長室にお邪魔しております。お時間を頂戴しありがとうございます。2004年に先代のお父様が突然お亡くなりになり、当時主婦をされていた諏訪先生が、急きょ精密加工メーカーを引き継がれたストーリーはあまりに有名で、ご著書『町工場の娘』は8刷を数えるほか、2017年にはNHKで内山理名さん主演のドラマの原作にもなっています。まずは、ご著書やドラマを見ていない本誌読者向けに、当時のお話を、金融機関との関係を中心に、お話いただけないでしょうか。諏訪 2004年4月、メーカーに勤務している主人の海外赴任が決まり、家族で渡米する準備をしていました。米国での新生活を始めるため、既に荷物を船便で送っています。そうした中、病院に緊急入院してからわずか4日で父が亡くなりました。幹部社員からの依頼もあり、私が社長を継ぐことにしたのですが、父の社葬の数日後に訪問してきたメインバンクの支店長から同業メーカーとの合併を持ちかけられ、しかも「社長には、お辞めいただきます。合併後の新会社社長には、先方の社長に財務省再生プロジェクト 部局横断的勉強会(4)「事業承継の現場から~「その時」を支えるファイナンスとは?」編大臣官房地方課総務室長 川本 敦/国際局為替市場課資金管理室課長補佐 林原 賢悟大臣官房秘書課財務官室課長補佐 足立 直也/金融庁総合政策局国際室課長補佐 大槻 裕明関税局関税課課長補佐 神代 康幸34 ファイナンス 2021 Jun.SPOT

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