ファイナンス 2021年6月号 No.667
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から突出して世界最悪だった債務残高は一層深刻化し、2020年度の財政赤字は対GDP比14%と、前年の4%から大幅に悪化する見込みである。さらに、IMFによれば2021年の日本の債務残高対GDP比は256%と、他国と比較しても引き続き突出することとなる。他方、インフレ期待は依然として弱く、それを前提とした異次元金融緩和策への継続的なコミットメントもあり、現在のところ債務問題の顕在化には至っていない。実際、危機発生時に対応する財政余力が残されていないとの懸念に反し、大胆な財政出動は首尾良く実行され、債券市場への影響も限定的であった。ただし、他国の追随を許さぬ規模の政府債務残高と日銀バランスシートは依然脆弱性を孕んでいる。眼前に確かに存在するリスクを放置し、コロナ後の出口戦略から目を背けるべきではない。無論、容易な出口はない。だが抜け道もない。今後我が国においても、高齢者の医療費負担増を含めた恒久的な支出抑制策のための歳出改革や、適切な税制改革、財政健全化目標への継続的なコミットメント等をもって、長期的な財政の持続可能性を担保するなど、未来に責任のある政策の在り方を議論していかなければならない。~2021年5月 再び東京~未知のウイルスはいまだ猖獗を極めている。欧米等先進国ではワクチン接種が進み感染拡大が抑制されてきているものの、インドでは変異株が急速に拡大し、状況は引き続き流動的だ。新型コロナの流行を契機に世界の形は良くも悪くも大きく変わることは日月自明である。国際局に配属されて1年近くが経ち、世界情勢の分析が習慣化していた。次はどうなるだろうか。いや、どうすべきだろうか。ところで、ついぞ海外出張は実現しなかった。国際会議も海外要人との面会もほとんどオンラインでやっている*31。「オンザロック」を脱し、あの日諦めたワイナリー巡りができる日は来るのだろうか。いつか「日常」が取り戻せることを夢見て今日もテレワークを行うのであった。羽はまだ大事に折り畳まれている。*31) 6月上旬には、ロンドンにて約2年ぶりの対面開催となるG7財務大臣・中央銀行総裁会議が予定されている。筆者略歴庄中 健太(しょうなか けんた)財務省国際局地域協力課国際調整室 課長補佐2013年財務省入省。主計局、高松国税局、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局を経て、北京大学、イェール大学に留学。2020年7月より現職。国際調整室では欧米等先進国の政治・経済情勢の分析、財政当局の二国間協議等を担当。 ファイナンス 2021 Jun.33新米課長補佐の目から見る激動の国際情勢(第1回) SPOT

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