ファイナンス 2021年6月号 No.667
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のみ、不要不急の外出も禁止された。もとより誘惑のないこの街を男はとても「気に入って」いたが、これで一層学業に熱中できると息巻いた。米国人や永住者には1,200ドルの現金給付があるらしい。当然、外国人留学生は対象外である。特に残念でもなかったが、今度は日本でも10万円の給付が行われるとの知らせを聞いた。対象者は日本に住民票のある者で、外国人も含むとのこと。日米いずれの恩恵にも与かれなかった男は激怒した。必ず、これをネタにすることで10万円分の元を取り戻さねばらぬと決意した。欧州各国の対応2020年2月下旬にイタリアから始まった欧州における感染拡大は、3月以降、フランス、ドイツ、英国とピークを移しながら、欧州全土に飛び火した。ユーロ圏経済は、感染拡大を受けてドイツ、フランス、イタリア*13) EUの機能条約(The Treaty on the Functioning of the European Union)は、単一通貨ユーロの信認の維持と、健全財政を持続的な経済成長の基盤とするため、年間の「財政赤字をGDP比3%以内」、「政府債務残高をGDP比60%以内」に抑制するという財政規律の遵守を定めている。また、「安定・成長協定」において、財政規律の遵守にかかる具体的な手続が補完されている。*14) Gov.UK(2020)“UK diners eat 100 million meals to protect 2 million jobs”*15) Bank of England(2020)“Bank Rate maintained at 0.1%-September 2020”等において厳格なロックダウンが実施された結果、米国と同様大きな経済的落ち込みとなり、実質GDP成長率は2期連続でマイナス(2020年第1四半期▲14.2%、同年第2四半期▲38.8%、前期比年率)となった。欧州各国は事業者等への融資・補助金、給与保証、失業手当等、新型コロナで影響を受けた産業や労働者に対して手厚い支援を行った。例えば、フランスでは飲食・観光業や自動車・航空産業等に対する基金の充実や、見習研修生を雇用した企業への支援金、デジタル分野のスタートアップ企業に対する資金繰り支援等を実施した。また、ドイツでは、学生への無利子融資や給付金支給、文化施設に対するキャンセル料の補填や改装工事費補助等の支援を実施した。EUにおいては、機動的な財政措置を可能にすべく、2020年3月に「安定・成長協定」(Stability and Growth Pact)*13*14*15に規定される例外条項の適用を決定英国は新型コロナ対策として、事業用固定資産税の免除や補助金の支給に加え、休業を余儀なくされた企業が従業員を一時帰休させる場合に給与の8割を負担する制度(Job Retention Scheme)等、様々な事業者向け支援を実施した。その中でも、ユニークな取組みとして「Eat Out to Help Out」と呼ばれるレストラン補助政策が話題を集めた(下図参照)。これは、2020年8月の1か月間限定で、月・火・水曜の外食を1人10ポンドを上限に半額補助するもので、全英72,000店舗以上が参加した。結果、予定を上回る1億食以上(5.2億ポンド)の請求に達し、飲食産業の雇用維持に貢献した。なお、レストラン予約サイト「Open Table」のデータによると、8月の対象日の予約は前年同月比で53%増加した(7月は同▲54%)*14。なお、本政策は予想以上の劇的効果をもたらし、レストランやカフェの価格を押し下げたことで、英国のインフレ率は7月の1.0%に対し、8月は0.2%にまで急落した*15。「Eat Out to Helo Out」のポスター(Gov.uk)補助によって割引されたレシート (駐在員提供)コラム3:英国版「Go To イート」 ファイナンス 2021 Jun.29新米課長補佐の目から見る激動の国際情勢(第1回) SPOT

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