ファイナンス 2021年6月号 No.667
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に基準財政需要額が変わらないので交付税の額は95(200-105)となる。このとき、収入全体は235(140+95)となり、税収入が40増えたにもかかわらず、全体は10しか増加しない。A+2年では、これまた何らかの要因により税収入が大幅に減少し、60となったとする。この際、同様に基準財政需要額が変わらないとすると、収入全体は215となり、税収入が40と大幅に下がったにも関わらず、収入全体では10の小幅の減少にとどまる。このように、良くも悪くも税収入の変化は、交付税で調整されるため、収入全体では大きな影響が出ない。また、収入全体では、基準財政需要額(200)を上回っている。つまりは、基準財政需要額に算定される事業(つまりは、「標準的な」事業であり、「バーチャルな」市の事業)を実施する限りにおいて、財源は保障されているのだ。ここで重要なのは、現実を見ると、実際に市が行っている事業は、「標準的な」事業に限られないということだ。次の章でそれを見ていく。〈表1〉自治体の収入全体の数値例年度基準 財政 需要額税収入基準 財政 収入額交付税収入 全体差額A年20010075125225-A+1年 (税収が40増加)2001401059523510A+2年 (税収が40減少)2006045155215▲10余談になるが、基準財政収入額には都市計画税や入湯税は含まれない。なので、これらの税収が増えても基準財政収入額は増加しないため、普通交付税額が減額しない。5海津市と輪之内町の行政サービスについて(基準財政需要額の観点から比較)ここまで、普通地方交付税という制度について論じてきた。ここで、海津市と輪之内町の実施している事業について基準財政需要額への算定という観点から検討していきたい。表2は海津市と輪之内町ぞれぞれの実施している事業の比較である。〈図3〉基準財政収入額について(尼崎市資料)基準財政収入額のポイント【大前提】○基準財政収入額は、各団体の「標準的な税収入の一定割合」(概ね75%)を表す。○この数値は、税目ごとの課税客体の数量や、課税実績を基礎に算定。基準財政収入額=(標準的な税収入)×75%+地方譲与税等市民税、固定資産税、市たばこ税、地方消費税交付金(従来分)など自動車重量譲与税、地方揮発油譲与税、地方消費税交付金(社会保障財源充当分)など<個人市民税均等割の算定例>納税義務者数×(基準税率×75%)×徴収率本市の実際の納税義務者数標準税率(@3,500円)標準的な税の徴収率(P.20参照)※地方消費税交付金(社会保障財源充当分)とは、地方消費税の税率引き上げ相当分基準財政収入額の算式22 ファイナンス 2021 Jun.SPOT

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