ファイナンス 2021年6月号 No.667
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いく。なお、日本銀行は、概念実証の開始に合わせて、「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」を新たに設置し、3月に第1回会合を開催した。銀行やノンバンク決済事業者の業界代表に加え、財務省や金融庁からも本協議会に参加頂いている。日本銀行としては、概念実証の進捗状況に応じて本協議会を随時開催し、実験の内容に関する関係者との情報共有を図るとともに、今後の進め方についてしっかりと協議していく方針である。3.制度設計面の検討「取り組み方針」では、実証実験と並行して、制度設計面の検討を深めていくこととしている。CBDCの導入が国民生活や経済活動に与える影響は大きく、その設計に当たっては、慎重な考慮を要する様々な論点が存在する。日本銀行としては、例えば、1.中央銀行と民間事業者の協調・役割分担のあり方、2.CBDCの導入が金融システムの不安定化に繋がることを回避するための方策(CBDCの発行額・保有額制限や付利に関する考え方)、3.プライバシーの確保と利用者情報の取り扱い、4.デジタル通貨に関連する情報技術の標準化のあり方*4などについて、順次、検討を進めていく考えである。*4)決済システムレポート別冊「デジタル通貨に関連する情報技術の標準化」(https://www.boj.or.jp/research/brp/psr/psrb210525.htm/)*5)国際決済銀行によるサーベイは以下で詳細が入手可能https://www.bis.org/publ/bppdf/bispap114.htm*6)主要中銀による共同報告書https://www.bis.org/press/p201009.htm4.内外関係者との連携ここ数年、多くの中央銀行が、CBDCに関する検討を積極化している。国際決済銀行による直近の調査によれば、調査対象の65の中央銀行のうち、86%の中銀がCBDCに関する何らかの検討に取り組んでいる*5。こうした中、一部の小規模な新興国においてCBDCを正式に発行する動きがみられるほか、中国では、複数の都市でデジタル人民元の発行に向けたパイロット実験が進められている。先進国においては、日米欧の7つの主要中央銀行が、昨年以降、CBDCの活用方法や先端的な技術に関する共同研究を続けており、10月には、CBDCの検討を進める際の「基本原則」などを取り纏めて公表した*6。日本銀行としては、こうした場も活かして主要中銀としっかり連携し、CBDCの基本的な特性やそれが実務面に及ぼす影響等について理解を深め、自らの検討にも活かしていきたい。国内の関係者とも密接に協力していく。もとより、決済システムの構築は中央銀行だけで進められるものではない。CBDCの導入を検討する場合には、システム面や制度面を含め、広範かつ大規模な取り組みが必要となる。日本銀行としては、こうした点を十分に認識したうえで、今後とも、民間事業者や関係当局などと連携しながら、適切に検討を進めていく方針である。図表4 台帳の管理主体とCBDC移転の記録方法CBDCトークンNo.1日本銀行日本銀行日本銀行仲介機関Y仲介機関XXABCDYXYCDXABCDYAB仲介機関X仲介機関YABCDABCD設計パターン1設計パターン2設計パターン3は、CBDCの動き。ユーザーユーザーユーザー口座振替(台帳)紐づけの変更口座振替(台帳)(台帳)口座振替(台帳)(台帳)口座振替仲介機関X仲介機関YABCD●日本銀行が台帳を管理●口座振替によりCBDCが移転●仲介機関はユーザーの口座残高を記録する台帳を管理し、日本銀行は仲介機関単位の口座残高を記録する台帳を管理●口座振替によりCBDCが移転●日本銀行が台帳を管理●保有者IDとトークンIDの紐づけを変更することでCBDCが移転 ファイナンス 2021 Jun.11新しい通貨 CBDC特集

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