ファイナンス 2021年6月号 No.667
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米国●FRBは、2020年8月、ボストン連銀とMITがデジタル通貨プラットフォームの構築に向けて共同研究を行っていることを公表。本年半ば以降、第一段階の研究成果を発表するとしている。●パウエルFRB議長は、2021年2月、デジタルドルは「非常に優先順位が高いプロジェクト」と発言。●イエレン財務長官は、2021年2月、「各国中央銀行がCBDCに目を向けることは理にかなっている」とし、「より早く安全で安価な決済手段としてデジタルドルは効果を発揮できる」と前向きな姿勢を示した。●パウエルFRB議長は、2021年5月、米国におけるCBDCの利点とリスクをまとめたディスカッションペーパーを本年夏に公表すると発表。欧州(ユーロ圏)●2020年10月、ECBは、一般利用型CBDC(デジタルユーロ)に関する報告書を公表。2021年半ばに、実証実験を開始するか否か判断予定。●2021年3月、ECBのパネッタ専務理事は、デジタルユーロの正式発行は約5年後になるとの見通しを示した。●2021年4月に公表されたパブリックコメントでは、市民・専門家が最も重視する機能はプライバシーとの結果に。バハマカンボジア●2020年10月20日、バハマ中央銀行は、「サンドドル」の正式発行を公表。●2020年10月28日、カンボジア中央銀行は、「バコン」の正式発行を公表。バコンには、日本のフィンテック企業であるソラミツの技術を利用。出典:報道等に基づき筆者作成(5)先進国における協調の動きこうした中、先進国における国際協調の動きとして、国際決済銀行(BIS)と日米欧を含む7か国の中央銀行*10は、2020年に入ってから、一般利用型CBDCに関する共同研究を実施しており、同年10月に共同報告書「中央銀行デジタル通貨:基本的な原則と特性」を公表している。共同報告書の中では、CBDCに関する原則や、CBDCシステムが備えるべき基本的な特性について記述がなされるなど、先進国における一般利用型CBDCのスタンダードづくりを目指したものとなっている。一方、2020年10月に行われたG7財務大臣・中央銀行総裁会議において、CBDCについて、「透明性」「法の支配」「健全な経済ガバナンス」にコミットして*10)カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、連邦準備制度理事会、スウェーデン・リクスバンク、スイス国民銀行いる先進国の取組は促していくべきである一方、こうしたコミットメントを欠くものには注意喚起を行っていくべきとの共同声明が発出され、本年6月のG7財務大臣・中央銀行総裁会議(英国・ロンドン)においては、CBDCが持つべき共通の原則について、本年後半に結論を公表すると発表された。G7諸国は、国際通貨システムの安定を確保するため、ともに連携しながら、デジタル通貨の動向を注視していくこととしている。G7財務大臣・中央銀行総裁会議(2020年10月)の様子(提供:広報室)以上の通り、CBDCの検討の進捗状況は国・地域によって差は見られるものの、重要な課題と位置付けて検討を本格化する国が増加している。社会・経済活動のデジタル化が進む中で、通貨のデジタル化も進んでいくと考えられ、CBDCに関する世界の動きは今後さらに加速する可能性がある。3.我が国におけるCBDCへの対応(1)現在の検討状況こうした中、我が国においては、政府としては、現時点でCBDCの具体的な発行の計画はないものの、デジタル化の流れの中で、「当然検討すべき」課題であり(本年3月22日・参議院財政金融委員会における麻生太郎財務大臣答弁)、私が所属する理財局国庫課においても、通貨制度を所管する一環として、CBDCについて様々な調査・検討を行っている。また、日本銀行において、2020年10月に「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表し、中央銀行と仲介機関による決済システムの二層構造(間接型発行形態)を維持することが適当との考え方とともに、より具体的・実務的な検討を行うため、段階的に実証実験を進めていくことを表明した。これに基づき、日本銀行は、本年4月より、実証実験を開始し、概念実証フェーズ1として、システム的な実験環境を構築し、CBDCの基本機能(発行、流通「中央銀行デジタル通貨:基本的な原則と特性」表紙(出典:国際決済銀行(BIS)HP※)※本報告書は国際決済銀行HPにて無償で閲覧可能。 ファイナンス 2021 Jun.7新しい通貨 CBDC特集

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